歯周病はポルフィロモナス・ジンジバリス、タネレーラ・フォーサイシアなど、嫌気性グラム陰性菌による感染症だ。複数の歯周病菌が集団でバイオフィルム(歯垢)を作り、その中で菌が増殖し、歯肉の腫れや出血を起こす歯肉炎や歯の周囲の組織を壊す歯周炎へと症状を進行させる。
これら歯周病の患者数は、厚生労働省調査で約5000万人と推計され、40代以上の日本人の約80%が罹患しているとされる。
歯周病の予防は歯垢を落とし、歯周病菌の増殖を抑えることが最良の方法だ。しかし既に歯周病が進行してしまった場合は、歯科医を受診し、超音波スケーラーなどで歯と歯肉の間にある歯周ポケットの洗浄や歯石除去が欠かせない。
東京医科歯科大学大学院・生涯口腔保健衛生学分野の荒川真一教授に話を聞いた。
「超音波スケーラーはチップの先端を振動させながら水を流し、歯垢や歯石を除去します。殺菌効果を一段と高めるためにオゾンナノバブル水を使用できないかと考え、検証する実験を行ないました」
オゾンナノバブル水は歯周病菌だけでなく、黄色ブドウ球菌や様々な耐性菌などに対する殺菌効果も高いという実験データも報告されている。またオゾンナノバブル水は生細胞が半減する時間が24時間以上と長く、細胞毒性が低く安全性の高さも証明された。
現在臨床では、超音波スケーラーに直接オゾンナノバブル水のタンクをつけて洗浄殺菌に利用している。また歯科医院で口腔清浄剤として販売も始まった。事前に歯磨きをしてバイオフィルムを壊したあとで使用するよりも高い殺菌効果が得られ、高齢者では誤嚥性肺炎などの防止に繋がると期待されている。
(取材・構成/岩城レイ子)
※週刊ポスト2012年10月19日号