金メダルを獲得した「人魚ジャパン」の選手たち。左から福田朋夏(ふくだ・ともか)、平井美鈴(ひらい・みすず)、廣瀬花子(ひろせ・はなこ)
この夏のロンドンオリンピックの興奮は記憶に新しい。17日間の熱戦で日本勢のメダル獲得総数は合計38個と史上最多。柔道、体操、レスリングでの金メダルも大いに盛り上がった。3つの金メダルを獲得した女子レスリング代表選手をはじめ、メダリストたちはその後多数のメディア露出を果たした。さらに、メダリストは東京・銀座での大パレードに参加し、50万人の観衆が訪れるなど、多数の注目を集めた。
その一方で、オリンピックに出なかった競技のため、世界一であってもあまり注目されない例もある。それは、今年7月23日に世界選手権で優勝した女子ソフトボール日本代表だ。北京オリンピックでは上野由岐子投手の活躍もあり優勝し、その後かなりの注目を浴びた。だが、野球・ソフトボールがオリンピックの競技から外れたため、途端に注目度は激減。世界一になってもさほど大々的に報じられることはなかった。
オリンピックに出なくては世界一になっても注目度は低いことをソフトボールが示したが、ほかにも知られざる世界一の日本代表が存在する。それは「人魚ジャパン」。「人魚ジャパン」はロンドン五輪の熱狂が去った9月にフランス・ニースで開催されたフリーダイビングの世界選手権にて優勝し、金メダルを獲得したチームである。
フリーダイビングとは日本ではあまり聞きなれないが、映画『グラン・ブルー』で有名になった素潜りの競技だ。ヨーロッパが本場であり、団体戦は2年に一度開催される。一ヶ国男女3名ずつの選手がコンスタントウェイトウィズフィン(潜る深さ)、ダイナミック(水平に泳ぐ距離)、スタティック(息を止める時間)の3種目を行い、男女別に国ごとの総合得点を競う。
今大会の女子チームは平井美鈴、廣瀬花子、福田朋夏の3選手が代表選手として戦った。フリーダイビングの団体戦は2010年7月には沖縄で開催され、ここでも日本女子は金メダルを獲得している。
つまり今回で二連覇を達成したということだ。しかもフリーダイビング発祥の地ニースで開催された今大会で、強豪のフランスに大差を空けての圧勝。本場ヨーロッパで、体格も小さな日本の女性が成し遂げた快挙だ。大会中はマスコミ報道こそほとんどされなかったが、実はFacebookなどの口コミでファンが集まり、密かな盛り上がりを見せていた。
人魚ジャパンの広報担当・武藤由紀さん(自身も選手)は、今回の金メダル獲得について「フリーダイビングはメンタルが大きなウェイトを占めるスポーツですが、世界大会のプレッシャーと緊張の中、それぞれが強みを発揮し実力を出し切れました。
チームの団結力や日本からの応援も選手を支えました。海に囲まれた日本の強さを本場ヨーロッパでアピール出来たことが嬉しいです。パーフェクトな金でした」と振り返った。