金本知憲(阪神)、石井琢朗(広島)、小久保裕紀(ソフトバンク)……、プロ野球界では今年も数々のスター選手が引退したが、それ以外にも、戦力外通告を受け、ひっそりと球場を去っていく選手は多い。
プロ入り19年目でオリックス時代と併せて優勝5度の経験を持つ中日・平井正史(37)も今年、球団から肩を叩かれた。
中継ぎのスペシャリストも若手の台頭にはなすすべがなかった。平井が明かす。
「この2~3年、この時期になると『今年は大丈夫かな』と考えていました。ついに来たか、と思いました」
平井は「まだまだ1イニングならば抑えることができる」との自負を持つが、取り巻く状況は厳しい。中日番記者はこういう。
「今年は4月にふくらはぎを痛めて出遅れたのが響いた。中日は投手陣のレベルが高いから一軍への昇格ができない。落合監督のもとV4に貢献した平井は現役を諦めても球団スタッフとしてチームに残るという選択肢があった。球団側は、引退を勧めたそうですが平井はそれを辞退。二軍で調整する道を選びました」
だがシーズン終盤になっても調子は戻らない。トレードするにも、年俸6500万円がネックになった。球団が選択したのは戦力外通告だった。再び番記者。
「実は古巣のオリックスに中日元監督の山田(久志)さんが就任するという話があったんです。山田さんなら自分を引き取ってくれると期待した。でも森脇浩司コーチが内部昇格することになり白紙に戻りました。球界人事は人脈の世界。トップが一人変わればチーム構想は180度変わる。ベテランといえども運命に身を委ねるしかないんです」
※週刊ポスト2012年10月26日号