昨年から今年にかけて、投資信託マーケットは、リーマン・ショックを超える6か月連続の資金純流出という異例の事態を迎えた。その後、3月から7月まで、5か月連続の純流入に転じ、ようやく落ち着きを取り戻しつつある。
しかし、マーケット内のファンド間では、大きな資金の移動が顕著となっている。特に高い人気を誇っていた『グローバル・ソブリン・オープン』(グロソブ)は大幅に残高を減らしているという。投信マーケットの変化をリッパー・ジャパンのファンドアナリスト、篠田尚子氏が解説する。
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投信マーケットで残高を減らしたのは、まずは通貨選択型ファンドだ。ブラジルレアルや豪ドルといった高金利通貨を運用対象に組み込み、外国債券の高利回りと併せて高い分配金を出していたが、ユーロ危機の深刻化で損失が発生し、解約が相次いだ。
また、“お化けファンド”と呼ばれ、世界の信用力の高い国債などに投資する『グローバル・ソブリン・オープン』(グロソブ)も、ユーロ危機で通貨安と債券安のダブルパンチを受け、損失が発生。ピーク時に6兆円程度あった純資産残高は、約1兆5000億円まで減少し、直近1年間でも約9000億円減っている。
その一方で、順調に純資産残高を増やしているファンドがある。先進国債券ファンドと新興国債券ファンドだ。いずれも通貨選択型ファンドやグロソブから流出している資金の受け皿となっている模様だ。
先進国債券ファンドとは、世界の投資適格格付けの公社債が投資対象で、先進国の国債を主として、社債や新興国の国債などでも運用する。確実で安定的なインカム・ゲイン(利息収入)を得ることを目指している。そして、新興国債券ファンドは、新興国の公社債を主要投資対象とし、優良格付けの債券と比べてより高いインカム・ゲインを得ること、加えて、金利と為替の動向次第ではキャピタル・ゲイン(値上がり益)を得ることを狙う、というファンドだ。
いずれも運用手法や投資対象としては、目新しいファンドではない。特に、先進国債券ファンドはグロソブと大きな違いがないように見える。では、どこが違うのか? 実は、先進国債券ファンドおよび新興国債券ファンド共に、パフォーマンスが好調で、資金が流入しているのは「為替ヘッジあり」のタイプなのである。
先進国債券ファンドを過去半年間の純設定額の多いものを見てみると、上位はほとんど「為替ヘッジあり」で占められており、騰落率も比較的高くなっている。新興国債券ファンドも同様で、「為替ヘッジあり」が上位に連なっており、かなりの新規資金が流入していることがわかる。
※マネーポスト2012年秋号