国内

“違い”にこだわった福田康夫氏 やはり違いわかる人物だった

「私は自分自身を客観的に見ることができるんです。あなたとは違うんです」

 首相退陣会見で記者にこう語りかけた福田康夫・元首相(76)が引退する。福田氏は、“違いのわかる男”としてその名を政界に残した。

 元首相の父・福田赳夫氏が政界を引退した後、1990年に後継者として衆院選に初当選。世襲議員として登院した時、記者団に父親に関する質問をされると、「あんな年寄りと一緒にしないでください」と、ここでも“違い”を強調した。

 そういうだけのことはあって、福田氏は世代間の“違い”に敏感だった。

 首相在任中の2008年4月1日、75歳以上に保険料を課す後期高齢者医療制度を断行した。「平成の姥捨て山」と評された制度の導入によって、日本全体の“若返り”に邁進したのだ。

 政治評論家の板垣英憲氏はこういう。

「老後に生活の不安を抱えるような、庶民感覚のある政治家にはとても無理なことだったでしょう。日本憲政史上初の親子での総理大臣という“政界のサラブレッド”であり、老後の心配など微塵もする必要のない福田氏だからこそ実現できた政策だといえます」

 父親との“違い”には最後までこだわっていた。赳夫氏は1979年の東京サミットに首相として参加できなかったことを非常に悔しがったというが、康夫氏は2008年に洞爺湖サミットをホスト国の首相として成功させる。これに満足したのか、サミットの直後、「あと2日で丸1年」というタイミングで首相の座を下りた。

「自民党の外交部会長や衆院の外務委員長を歴任するなど、福田氏は外交に関心が高かった。しかし、小泉政権では本当は外務大臣をやりたかったのに、田中真紀子氏に取られたということもあった。社会保障制度ではなく、もっと外交分野で活躍してほしかった政治家でした」(板垣氏)

 2012年9月、「若い人にバトンタッチしたい」と引退を表明。息子で議員秘書の福田達夫氏に地盤を譲るとされる。昨今、批判の多い「世襲」とどこが違うのか――国民にはわからないが、福田氏にだけはその“違い”がわかるのだろう。

※週刊ポスト2012年10月26日号

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン