10月8日(日本時間9日)に行なわれたオリオールズとの地区シリーズ第2戦。初回、完全にアウトのタイミングでホームに戻ってきたイチローが、捕手のタッチを2度かわし、見事ホームインを決めた。このプレーに日米のファンは拍手喝采。メディアも「忍者ホームイン」などと、手放しで賞賛した。
10月22日で39歳になるイチロー。だがこの機敏な動きを見ている限り、まったく年齢を感じさせない。9月終盤には週間MVPにも選出された(打率.600、2本塁打、5打点、6盗塁)。
「好調の要因は、今回の“忍者ホームイン”を生んだ、脚力の安定にあります。イチロー自身が“どんな動きをしてもケガしない自信がある”と語った強靱さはもちろん、足の速さもまったく衰えていない。事実、レギュラーシーズン終盤となる9月19日には、1試合4盗塁を記録しています」(在米MLB記者)
普通、年齢とともに脚力も弱っていきそうなもの。しかし、一流選手の場合はそうではないらしい。通算1065盗塁を記録した福本豊氏は、「加齢によって脚力が衰えることはない」と語る。
「脚力が弱まったなら跳躍力が落ちるが、僕は晩年も変わらなかった。引退前でもジャンプしてフェンスによじ登って、捕球できていたからね。それに足の速さも変わらない。
僕は引退直前、盗塁数は減ったけど、成功率は変わらなかった。盗塁数が減ったのは、単純に出場機会が減ったのと、チームに信用されてなかったのか、“待て”のサインが出て自由に走れなかったのが理由やね」
41歳で引退した福本氏だが、「足で若いヤツに負ける気はしなかった」と語る。
「正直いって、まだ余力があったからね。仮に足が遅くなったとしても、スタートを切るタイミングなど、技術でカバーすれば何の問題もない。僕は44歳くらいまでなら、やろうと思えばシーズン30盗塁はできたと思うよ。イチローはまだ39歳やし、しっかり鍛えている。まだまだやれると思うよ」
好調をキープしているものの、来季の契約はまったく白紙状態のイチロー。阪急(オリックス)の偉大な先輩のエールに応え、「不惑」でもうひと花咲かせることができるだろうか。
※週刊ポスト2012年10月26日号