10月17日、西友が「史上最安値」と謳う3990円のダウンジャケットを全国約300店で一斉に販売し、今年も低価格を競うカジュアル衣料の秋冬商戦が本格化している。
西友が話題を呼んでいるのは、なにも価格だけではない。
「ダウンの販売に先駆けて行われた秋冬衣料品のPB(プライベートブランド)発表会で目を引いたのは、商品よりもブランドロゴ。赤い四角の中に白抜きで『SEIYU』の文字。それだけならまだしも、二段に分けて『CASUAL』と書いてあるロゴは、まさにユニクロのデザインとそっくりでした」(業界紙記者)
しかも、同社の担当者は「さまざまな専門店から常に勉強させていただいております」と、否定するどころか、むしろユニクロへのライバル心すら匂わせたという。節操がないと言われても仕方のない西友の戦略。そこにはどんな狙いがあるのか。ファッションジャーナリストの南充浩氏に聞いた。
「かつてフリースやジーンズの価格破壊が起こったように、ダウンジャケットもユニクロの『ウルトラライトダウン』を筆頭に、イオンやイトーヨーカ堂、しまむら、ユニーなどの相次ぐ参入で低価格化が進み、もはや飽和状態になっています。どのブランドも品質がさほど変わらなくなっている状況下では、値段を思い切って下げるか、他社に便乗したような売り方をするしか目標枚数を売り切ることができないのです」
その指摘通り、西友は国内最安値を掲げ、昨シーズン700万枚を売ったユニクロのダウンジャケットの顧客すら奪おうと、なりふり構わぬ販売手法に打って出たということか。同社は目標枚数を公表していないが、早期の大量生産を実現させ、前シーズンの2倍に売り上げを増やしたいと鼻息も荒い。
一方、ユニクロも黙ってはいない。今年のダウンは色柄のバリエーションを23から58に増やし、日本を含む13の国と地域で1300万枚売る計画を立てている。
しかし、前出の南氏は行き過ぎた販売拡大は得策ではないとの見方を示す。
「例えば、しまむらは『変化こそファッション』との考え方で、同じアイテムの追加仕入れは一切せず、“売り切れ御免”の方針を貫いて成功しています。近ごろ日本で勢力を伸ばすZARAやH&Mもこの発想です。電車の中で同じブランドのダウンを着ている人を何人も見かけることがあるように、トレンドアイテムはむしろ欠品してでも少しずつデザインを変えていったほうが飽きもこないし、ロングセラー商品になりやすいといえます」
冬の定番アイテムとして、この先も選ばれるダウンジャケットはどのブランドか。