容量約200リットルのドラム缶にコンクリート詰めされていたその遺体は、衣服はつけておらず、缶のカーブに沿うように折れ曲がった状態で発見された。死後約2か月と思われる遺体は腐敗が進み、左の肋骨3本とのど仏の一部が折れていた──。
兵庫県尼崎市の無職・大江和子さん(66才)が変わり果てた姿で見つかったのは、昨年11月のこと。主犯として逮捕されたのが、無職・角田美代子被告(64才)だった。
しかしその直後、実際に手を下していたのは、大江さんの長女・香愛被告(44才)、次女・裕美被告(41才)とその元夫、川村博之被告(42才)、そして、角田被告の戸籍上の親族で韓国籍の李正則受刑者(38才)の4人であったことが判明した。
角田被告が大江さん一家と知り合うきっかけとなったのは2009年春頃のこと。「電車のドアに持ち物が挟まった」などと、角田被告が阪神電鉄にクレームを入れたことだった。これに応対したのが当時、阪神電鉄に勤務していた川村被告だった。そのとき角田被告は、李受刑者と連れ立っており、「この子は昔ヤクザだった。うちの言うことはなんでも聞く」と脅したという。
「小心者で真面目な川村さんは、とにかく“怒りを抑えるため”と、角田の言うなりになって、食事などにも誘われるがまま行くようになったんです。でも恐怖心があるだけに、少しでも褒められたりすると大きな喜びを感じるようになったようで…。
角田は川村さんに対して、激しい言葉責めをした後でお小遣いをあげたり、ごちそうしたりという“アメ”と“ムチ”を使い分けていた。そうして川村さんはすっかり心を許してしまったんです。家族の話とかをするようになって、自宅に招くことになったんですから…」(川村被告の知人)
2010年4月、それが大江一家と角田被告の出会いとなった。
「角田は他人の弱みにつけ込むのがうまい。川村被告の家庭や仕事の愚痴を聞いて、“それなら今の仕事を辞めて、やりたいことをやったらいい”“奥さんに気に入らないことがあるなら、離婚したらいい”などと、アドバイスするように見せて、実は自分が得するよう、都合よく導いていったんです」(捜査関係者)
その時、川村被告の心はすでに完全に角田被告にとらわれていた。「おいしいコーヒーをいれる喫茶店をやる」という理由で阪神電鉄を退社。さらに、その半年後の2010年11月に、裕美被告と離婚した。しかし、川村被告は角田被告にただ利用されているにすぎなかった。
「喫茶店の開店資金として、川村被告は退職金約900万円の一部と、消費者金融から借りた数百万円を用意していたのですが、結果そのすべてを角田に騙し取られてしまった」(前出・捜査関係者)
財産を失い、家族も失った川村被告は、神戸市内の実家で暮らしていたが、しばらくすると角田被告が連日のように押しかけるようになった。そして、「ふたりの娘の面倒はあんたが見るべきだ」と吹き込み、再婚話まで持ち出した。そこに角田被告の狙いがあった。
「川村被告にしてみれば、自分のためにこんなに怒ってくれているとありがたい思いだったことでしょう。でも決してそうじゃない。当時、子供たちは別れた妻の裕美被告と一緒に、母の大江さんと姉の香愛被告と2世帯住宅で暮らしていました。角田被告は、そこに川村被告を送り込み、うまく話を持っていってその家を売却して大金を得ようとしていたんです」(前出・捜査関係者)
※女性セブン2012年11月1日号