いま、神経性の痛みを抱える患者数が増えている。痛みに関する大規模な調査によると、慢性的な痛みを感じている人の中で4人に1人が「神経障害性疼痛(とうつう)」の疑いがあるという(2011年『わが国における慢性疼痛および神経障害性疼痛に関する大規模実態調査』)。
そもそも痛みには、大きく分けて2種類ある。1つは、頭痛や歯痛、肩こり、打撲、切り傷などの“炎症”による痛み。これは重くズーンとした痛み方をする。もう1つが、神経障害性疼痛。特徴は、強いしびれ、電気が走る、焼けるように痛い、ビリッとくるなど、鋭い痛みだ。痛みの治療に詳しい日本大学医学部麻酔学科系麻酔科学分野の加藤実さんは、神経性の痛みについてこう語る。
「肩こりや腰痛など、いわゆる炎症による痛みが繰り返し起こることで、痛みを感じる神経が過敏になってしまうこともあるんです。なかなか治らない痛みは、神経に原因がある“神経障害性疼痛”かもしれません」
続けてその原因について、「人が痛みを感じる時、痛みを伝える神経伝達物質が放出され、脳に伝わって痛みを認識します。神経障害性疼痛の原因のひとつとしては、この伝達物質が出すぎることで起こることがわかってきました」と語る。
問題は、炎症による痛みと違い、神経による病気は原因が特定されにくいため、どのクリニックに行けばよいのかわからない場合が多いことだ。現在、神経障害性疼痛の人の中で約7割が我慢しているという調査結果もある。整形外科などで鎮痛剤や湿布を処方されても改善されず、マッサージや整体に通って一時的にしのいでいる人もいるという。受診方法について、加藤さんに伺った。
「痛みが腰や首、膝に出るなら整形外科へ、疱疹などを伴う場合は皮膚科へ。医師に正しい症状を伝えることが大事です。『首から肩にかけてピーンと電気が走るように痛い』など、痛みが出ている部位や痛み方を具体的に伝え、正しい薬を選んでください」
とはいえ、痛みを言葉に置き換えるのは容易ではない。以下に、主な痛みの症状を挙げたので参考にしていただきたい。
【神経障害性疼痛の症状 チェックリスト】
■しびれの強い痛みがある
■焼けるようなひりひりする痛みがある
■電気が走るような痛みがある
■針で刺されるような痛みがある
■衣類がこすれたり、冷風に当たったりするだけで痛みが走る
■痛みの部位の感覚が低下していたり、過敏になっていたりする
■痛みの部位の皮膚がむくんだり、赤や赤紫に変色したりする
さらに最近は、保険適用薬の処方も進んでいるという。「神経障害性疼痛は、湿布や鎮痛剤などいわゆる痛み止めが効かないケースも多く、最近では『リリカ』という薬を処方するようになってきています。これは、日本で初めて許可された神経障害性疼痛の治療薬で、保険が適用されます。『リリカ』は、神経を興奮させる物質の流入を低下させ、痛みを抑えます」(加藤さん)
代表的な神経障害性疼痛には、帯状疱疹後神経痛、糖尿病、坐骨神経痛、脊椎管狭窄症などの病気があり、ひどい場合は、5分以上、歩けないような激しい痛みを起こす症状も。痛みに我慢は禁物だ。