10月14日に群馬県館林市で「第2回 麺-1グランプリin館林」が開催された。「伊勢うどん友の会」を主宰する大人力コラムニスト・石原壮一郎氏もさっそく現場に駆けつけ、「伊勢うどん」がどのような反響をもって迎えられているか調査。「伊勢うどんから人生を学ぶことは多い」と語る。
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うどん、そば、ラーメン、焼きそば、パスタ……。日本人の麺好きっぷりは半端ではありません。10月14日、群馬県館林市で「第2回 麺-1グランプリin館林」が開催。全国から61団体が参加し、好天にも恵まれて6万人が来場しました。
もちろん、我が郷土の誇りである伊勢うどんチームも出店。伊勢うどんを深く愛し、フェイスブックで「伊勢うどん友の会」を主宰している身としては、(べつに頼まれてはいないけど)応援に行かないわけにはいきません。居並ぶ麺々の中で、太さとやわらかさでは間違いなくダントツで一番の伊勢うどんは、アウェーの関東でどう受け止められるのか。
スタートの10時を前に、各テントの前にはすでに行列ができています。伊勢うどんの前に並んでくれていたのは約100人。ちなみに、隣りのテントはうどん界の王者・讃岐うどんでしたが、珍しさの勝利か、伊勢うどんのほうが長い列でした。私の前に並んでいたのが、地元・館林から家族でやって来た小田原美穂さん(37)。テレビや雑誌で伊勢うどんを知り、「一度食べてみたい!」と恋焦がれていたとか。ああ、やはり伊勢うどんの気品と迫力に満ちた佇まいは、麺好きの心をくすぐらずにはいられないようです。食べたあとにも話を伺いましたが、「期待以上です。おいしかったです!」と満足なさっていました。
ほかに、隣りの足利在住で伊勢うどんのことは知らなかったという山口昭二さん(66)も「このへんのうどんと違ってやわらかいけど、これはこれでいけるね」と絶賛。そう、このあたりは昔からシコシコのうどんが名物で、館林市も「うどんの里」を名乗っています。さすが、うどん好きで、うどんをよく知るみなさんは、固定概念に縛られて「コシがない!」と怒ったりせず、食べた瞬間にその独自の魅力を感じ取ってくれていました。
この日の売り上げは、およそ650食。みなさんいろんな麺を連れの人と分け合って食べていたので、少なくとも1000人以上の人が伊勢うどんを体験してくれたことでしょう。「たくさんの人に伊勢うどんを知ってもらえて、我々も嬉しいです。とても意義のある一日でした」とは、ずっと麺をゆで続けていた三重県製麺共同組合・理事長の堀哲次さん(堀製麺社長)。三重県からクルマで7時間かけて群馬に乗り込み、準備から調理、撤収まですべてを行なっていたのは、理事長と前理事長と事務局長という組合の主要メンバーです。
この日、グランプリを獲得したのは「板倉きゅうりの冷や汁うどん」(大正五年創業上州板倉原田製麺)。去年に続いて二連覇です。さて、注目の伊勢うどんは……じつは讃岐うどんやソーキそばなどとともに招待枠で、投票の対象外なのでした。気を持たせてすいません。
勝ち負けなんて気にせず、ゆったりと我が道を突き進む――。そんな姿勢からも、伊勢うどんは私たちに大切なことを教えてくれていると言えるでしょう。何かとギスギスしている今の日本に必要なのは、コシがなくてやわらかい伊勢うどんスピリッツです。たぶん。