50才を超えても30代に見える大人気ドクター・南雲吉則(なぐも・よしのり)先生(57才)が、読者から寄せられた体に関する相談に答える。今回は冷え症の改善策について解説する。
【質問】
一年中、冷えに悩まされています。半身浴をして血行をよくする努力をしたり、温かい飲み物で、体の中から温めたりしているのですが、なかなか改善しません。冷え症改善に有効な対策を教えてください。(ローズマリー・27才・会社員)
【南雲先生の回答】
冷え症で悩んでいる女性、多いよね。特に働いている人は、オフィスでの温度調節が難しいんじゃないかな。電車内やレストランなどの外出先でも、冷房が効きすぎていて、つらかったりするよね。そもそも女性は、男性に比べて、発熱物質である内臓脂肪が少ないから、冷え症になりやすいんだよね。
実はぼくも、以前はすごく冷え症だったんだ。お風呂に入ってもすぐに湯冷めするし、椅子に座っていても膝がスースーするしで、いつも膝掛けが手離せなかったんだよ。そのころは、半身浴をしたりサウナに行ったりして、一所懸命体を温めることばかり考えていた。でもあまり改善しなかったから、昔からいわれている“冷え症は、体を温めるといい”って本当かなって、ちょっと考えてみたんだ。
ぼくたち人間は、自力で体温を一定に保つことができる“恒温動物”で、体温を保つために、脳の“体温調節中枢”がセンサーとして働いている。だから体を温めると、体温調節中枢が体温の上昇を感知して、体を冷やそうとするんだ。体の核となる深い部分の、“深部体温”が下がるんだね。
長風呂をした後、すぐに湯冷めをしてしまうことがあるのは、体温調節中枢が働いて、汗をかくことで体温を下げようとするからなんだね。
では逆に、体を冷やすとどうなるんだろう? そう、体温調節中枢が働いて、今度は体温を上げようとするから、深部体温が上がるんだ。
この法則に気づいたきっかけは、ちょっとした偶然とチャレンジだったんだよ(笑い)。昔はぼくも、毎朝お湯で顔を洗っていたんだけど、ある寒い冬の朝、急いでいてお湯が出るのが待ちきれなくて、水で顔と手を洗って、出かけたことがあったんだ。
手がかじかんでしまうかなと思ったら、逆に手がジンジンと温かくなり、色もピンクになってきたんだよ。子供のころ、雪合戦の後、手がポカポカしたような感じかな。それで、“もしかして、体も冷やすことで逆に温まるんじゃないか”と思って、改めて手足に水シャワーをかけてみたところ、やっぱり手足がポカポカしてきたんだ。
次に、体全体を温めるにはどうしたらいいかを考えた。いきなり水を体全体にかけると心臓に負担がかかるから、ぬるま湯から、だんだん温度を下げてみたんだよ。すると、バスタオルで体を拭いている最中から、湯気が出るくらいに体が温まることを発見したんだ。
もうひとつのポイントは、薄着をすること。冷たい水を浴びて体が温まったことで、“寒さ”が冷え症改善のキーワードだと思ったぼくは、マフラーやタートルネックのニットをやめて、さらに薄着で外出してみたんだ。すると不思議なくらい体がホカホカして、汗ばむような変化を感じたんだよ。
どうしてマフラーやタートルネックをやめたのかって? それはね、体温調節中枢は首の辺りにあるから、首を冷やすと、深部体温が上がりやすいんだよね。頭を冷やすことによって、自然と足が温かくなるというわけなんだ。まさに、昔から体にいいといわれている“頭寒足熱”状態だよね。だから本当は、入浴時も首を冷やすと早く体が温まるんだけど、首を冷やす場合は、心臓に負担をかけないように、徐々に慣らしていったほうがいいね。
※女性セブン2012年11月1日号