長い不況のトンネルから、なかなか抜け出せないままの日本経済。そして、増税や社会保険料の引き上げなど、国民の負担も増えるばかりだ。いったいどれだけ待てば日本の景気が良くなるのだろうか──。『メルマガNEWSポストセブンVol.36』にて、経済評論家の森永卓郎氏が、現在の日本経済の深刻な状況を以下のように分析する。
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実はいま日本の景気に黄信号が灯っている。例えば、10月の月例経済報告で、政府は景気の基調判断を3か月連続で引き下げた。そして報告文のなかから「景気回復」という文字が消えた。東日本大震災による急激な景気後退のあと、日本経済は緩やかながら景気を戻してきたのだが、ついに景気後退が鮮明になってきたのだ。復興需要の一巡や領土問題をめぐる日中、日韓関係の悪化、さらには長引く欧州債務危機の影響までが加わって、内外需ともに明るい要素が何もない状況に日本経済は追い込まれている。
実際、景気指標をみても、8月の景気動向指数CI一致指数は、前月と比較して0.2ポイント下降し、5か月連続の下降となった。CIを構成する投資財出荷指数や所定外労働時間がマイナスの貢献をしており、先行きも明るくない。また、経済産業省が発表した8月の鉱工業生産指数は、前月比1.3ポイントと大きく下落し、基調判断も「弱含み傾向にある」と、2か月ぶりの下方修正となっている。
こうした経済環境のなかで、少なくとも今後3年間は、国民負担が大きく増加していく。2014年4月から8%、2015年10月から10%に引き上げられる消費税は、私の試算では年収500万円の子供2人世帯で、年間14万4000円の負担増をもたらす。それだけではない。今年6月に行われた年少扶養控除の地方税分の廃止、来年1月からの復興増税に加え、社会保険も厚生年金と健康保険の保険料が毎年引き上げられていく。さらに、原発停止にともなう電気料金の引き上げ、環境税の創設といった消費税以外の負担増をすべて合計すると、消費税とほぼ同額の負担増が家計にのしかかる。
消費税増税の国民負担は年間13兆5000億円だが、それと同じ程度の負担増が別途かかるのだから、負担増全体では年間27兆円ということになる。1997年、橋本内閣は、【1】消費税の5%への引き上げ、【2】サラリーマン医療費の本人負担増、【3】特別減税の廃止、という合計9兆円の国民負担増を課して、日本経済を15年に及ぶデフレに転落させた。今回はその3倍の負担増を課すのだから、下手をすると日本経済は恐慌に転落する。