消費税率が2014年4月には8%に、2015年10月には10%に引き上げられる見通しだが、かつて、3%の消費税導入時と5%への税率アップ時は、日本経済にどんな影響があったのか。経済アナリスト・森永卓郎氏が解説する。
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1989年の3%の消費税導入の際は、その影響は実は不明です。1990年にバブルが崩壊したことで日本経済が大混乱に陥ったことで、その内のどれほどが消費税による悪影響か、計測が極めて難しかったのです。
では、1997年の5%への引き上げの際はどうか。それ以後、15年に及ぶデフレが続き、名目GDPが1997年の時点より55兆円、率にして11%落ちたわけです。その間に、日本の株式市場の株価や不動産価格は半値になってしまいました。
消費増税は、景気の悪い時には決してやるべきではない。私は、1997年以降の教訓を含めて、そう口をすっぱくして主張してきました。だが、野田総理は、まさに「不景気のドン底」に断行しようというのです。その結果は、今以上の大不況を招くどころか、恐慌となる可能性がかなり高いと思っています。そうなれば、2014年には日経平均株価が5000円という事態も十分ありえると見ます。
ただし、恐慌になったとしても、いつまでも続くわけではありません。必ず切り替えて、反転上昇期がやってくるのです。「谷深ければ山高し」という投資格言もあるように、いったん奈落の底まで下落したものは、反転した際にはジャンプアップの幅も驚くほど大きくなります。
消費税引き上げが間近に迫ると、大きな買い物は引き上げ前にする、いわゆる駆け込み消費を考えがちです。たしかに住宅など購入する際、消費税率が3%上がるだけで100万円単位の出費増となるので、そう考える人も多いのでしょうが、実はお勧めできません。それより、投資のタネ銭となるお金を貯めておく方が得策です。
もし恐慌となれば、株や不動産の資産価値が暴落し、大バーゲンセール状態となる。その際に有利となるのは、そうしたものを二束三文で買い占めることが可能な大金持ち、キャッシュポジションの高い人たちなのです。というのも、昭和恐慌の時もそうでしたが、恐慌から脱する政策は円の供給量を増やす金融緩和策しかないからです。
いざ円の供給増となれば、資産価値は一転して昇り竜のように急上昇します。つまり、株や不動産の資産価値が暴落した絶好の買い場に、それを買えるタネ銭を持っているかどうかが、その後の明暗を大きく分けることになるのです。
※マネーポスト2012年秋号