過去に例のない規模で拡大し、暴徒化した反日デモ。中国で多数の店舗を構えるユニクロも大きな影響を受けている。しかし、国際社会で壁にぶつかりそれを克服することは、日本企業が真にグローバル化するには避けられない課題だ。ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏にこの課題への対応を聞いた。
――中国で「反日」気運が高まり、日本企業の中国でのビジネスに暗雲が立ちこめている。
柳井:もちろん暴力は許されるものではないし、現在の状況はどちらの国益にもならないから、一日も早く収束することを願っています。日中、そして日韓の摩擦は起こるべくして起こったと考えています。これまではいわば“タブー”として話し合わなかった領土問題について、中国や韓国が成長する中で強く主張し始めたということでしょう。
今後、問題を解決していくには、タブーを作らず冷静に主張しあい、違いは違いとして認識すべきです。それでも領土問題はなお解決が難しいのならば、今はまだその時期ではないと考えて、これまで日中がそうしてきたようにいったん「棚上げ」し、時を待つのも大人の知恵だと思う。
――外国との摩擦が起きると、国内では海外進出企業に対して「愛国心がない」、「金儲けできればいいのか」と矛先が向くのもいつもの論調だ。
柳井:非常に残念なことですね。我々は「日本代表」として世界で戦っています。当然ながら愛国心を持ち、日本人や日本企業としての強みを発揮して、グローバル化を目指しています。何より、日本人として、日本企業として出ていかなければ、真のグローバル企業など作れない。
今、アジアは「ゴールドラッシュ」です。今後10年間で、中国からインドまでの地域におよそ15億人の中産階級が生まれようとしている。そのアジアにおける日本の強みは、ヒト・モノ・カネ・情報・技術という産業インフラをすべて持っていること。この市場に挑戦しないことこそ日本の国益に反するでしょう。
※SAPIO2012年11月号