CSファーストステージを辛くも制した中日の高木守道・監督は、「敗戦の弁を考えていた」と、厳しい闘いを振り返った。が、71歳の老指揮官に最もプレッシャーを与えたのは、敵将の小川監督でも主砲のバレンティンでもなかったようだ。
「ヤクルトとの第1戦(13日)、中日のコーチ陣はピリピリしていました。というのも、“あのコンビ”が中継の解説をしていたからです」(中日番記者)
その2人とは、昨季まで中日を“オレ流”で8年連続Aクラスの常勝チームに育てた落合博満氏(58)と、ヘッドコーチとして落合氏の参謀役を務めた森繁和氏(57)。
「落合さんも森さんも歯に衣着せない。昨季は連覇を達成したのに解任された因縁があるだけに、高木采配を酷評するだろうといわれていました」(同前)
2人が解説を務めたのは「J SPORTS」。この試合はNHKのBSでも中継されたが、野球ファンの間では“人畜無害”なNHKではなく、こちらにチャンネルを合わせた人が多かったようだ。
2人はそんな期待(?)に見事に応えた。試合の前半は中日が2-0とリードしていたせいか、落合氏の口数は少なめ。だが、5回裏の中日の攻撃から“毒”が解禁される。5回を68球・無失点の先発・中田に代打・山崎武が告げられると、2人は「ハハハッ」と失笑を漏らす。
「やっちゃいけない交代。まだ投げさせていいんじゃないのかなと思います」
と、落合氏は疑問を投げる。しかも遊ゴロを打った山崎がベース前で一塁手・畠山との衝突を避けるためにスピードを緩めてアウトになると、「何をお嬢さん野球やってるんだろ。滑ればいいんだし、ぶつかればセーフなのに」と“ジャイアン”の愛称を持つ大ベテランを小娘扱いに。6回裏にはヒートアップ。リリーフした田島が2死一、二塁で打席に立つと、再び落合氏と森氏は「ハハッ」と呆れた笑い声。
「俺らだったら絶対に交代(代打)だよね」(落合氏)
「交代ですね」(森氏)
そして7回表も田島が続投すると、落合氏は「イヤ~な雰囲気だね」とボソリ。何と、それを言い終わるや否や田島はバレンティンにソロ本塁打を浴びてしまう。その後に田島が走者を2人出すと、中日ベンチは大慌てで浅尾に交代する。
「この雰囲気を作ったのは誰なんだ、ってことですよ。田島に投げさせる必要があったのかな」
「まぁ、野球を面白くしてくれましたな。ハハハ」
と、“落合節”は絶好調に。そして、驚く一言も飛び出した。
「ねぇ森、さっき(6回裏に)田島が打席に立った時に何を感じた? お客さん、シラけてたよ。高木監督の考えがあってということでしょうけどね……」
と、追加点を取りにいかなかった采配をチクリ。2007年の日本シリーズで完全試合直前の山井を交代させて観客をシラけさせた(*注)一件を思い出したファンも多かったのでは……。
【*注】2007年の日本シリーズ(中日vs日本ハム)の第5戦、日本一に王手をかけた中日は先発・山井が8回まで完全試合ペースの好投をしたが、1-0でリードした9回に落合監督と森コーチは守護神・岩瀬を登板させる。指のマメを潰した山井が降板を申し出たことによるものだが、日本初のポストシーズンでの完全試合達成が消えたことで物議を醸した。
結局、試合は中日が追加点を奪って快勝したが、「6対1というゲームの割には、中継ぎの疲労度は点差以上ですね」と苦言を呈することも忘れなかった。
※週刊ポスト2012年11月2日号