空前の規模に膨れあがった中国の反日デモ。中国で多数の店舗を構えるユニクロも大きな影響を受けている。しかし、様々な国で壁にぶつかりそれを克服することは、日本企業が真にグローバル化するには避けられない課題だ。ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏にグローバル化への対応を聞いた。
――日本企業の多くがグローバル化に対応できず苦しんでいる。
柳井:ピンチはむしろチャンスです。情報や商品、そして人間がほとんど瞬時に世界中を飛び回れる時代となり、これまでの秩序に変化が起きています。それを活かすのが企業の役割だと思う。
世界が均質化して市場がひとつになった今、国内シェアだけを狙う戦略では最初から負け戦にしかならない。世界市場ではナンバーワン企業が一人勝ちし、3位までならなんとか利益を出せるが4位以下は注目すらされないのが現実です。世界のハイストリートは、どこも同じブランドの店舗が並んでいるでしょう。
我が社は2020年に売上高5兆円を達成するという目標を掲げている。これはもちろん世界一。そのためには、世界中どこでも評価され、売れる商品とブランド力が必要です。つまり、グローバルブランディングが重要です。
この秋、米ニューヨーク・タイムズ紙に「ヒートテック」と「ウルトラライトダウン」の広告を出します。あえて商品の写真を一切使わず、商品コンセプトや開発の背景、ユニクロの思想を文章で伝える。値段や見た目を伝えるよりも、“ストーリー”を知ってもらうことが、グローバルブランドの構築につながると思うからです。
会社の方針、ブランド価値を全世界で統一した上で、どうしても変えられない部分だけローカライズしていく。現地化対応が必要なのは、それぞれの国の法律、宗教など実はごく一部なのです。アパレルで言えば、気候や体型は現地の事情を考慮しなければならないが、売れる商品やブランドは世界中同じです。
――ではなぜ多くの企業はグローバル化でつまずいているのか。
柳井:出先だけグローバル化しようとしては駄目なのです。肝心なのは本社が変わること。会社全体で世界に通用するシステムを作らなければ世界を相手にビジネスできません。だから我々は、英語の社内公用語化や、就業時間を7時から16時にする、といった世界標準の会社を目指している。
店長が大きな権限と責任を持って店舗運営できるようなフラットな組織や、店長には全員一度は海外で勤務してもらい、視野を広げてもらうことも、全社でグローバル化する考えに基づいています。
※SAPIO2012年11月号