プロ野球では、判定に文句をつけ、「退場!」と宣告されるシーンは野球の風物詩。何やら口論をしていて突如と「退場!」と腕を動かすわけだが、裏ではどんなやりとりがあるのか。『プロ野球審判ジャッジの舞台裏』(北海道新聞社刊)の著者で元パ・リーグ審判員の山崎夏生氏ほか、審判各氏が“退場”の思い出について語る。
山崎氏は合計17回という歴代1位の退場宣告を誇るが、すべて審判としての権威を守るため。退場を巡ってはトラブルもあったが、健全なゲーム成立のため毅然とした態度をとってきた。
審判たちによれば、監督にもそれぞれの抗議のスタイルがあったという。例えば金田正一監督は、山崎氏に対して「どこ見とんじゃバカヤロー!」と一喝。もちろん即退場だ。後日声をかけてきたが、「お前は大学を出とるらしいな。バカヤローはすまんかった。ヘタクソというべきじゃった」 これでも十分退場モノだが、カネやんらしい。
「長嶋さんはこちらが拍子抜けするほど判定に文句を言わない。王さんは抗議の場面でも論理的な説明を求める。野村監督はネチネチやるタイプでした」(元セ・リーグ審判・篠宮愼一氏)
こうした中、一味違ったのが稲尾和久氏だった。
「スタスタ歩いてくると“新ちゃんはうまい審判なんだから頼むよ。頑張れよ”と声をかけられた。ちょっと嬉しかったし、うまいなと思いましたね」(元パ・リーグ審判員・新屋晃氏)
※週刊ポスト2012年11月2日号