欧州債務危機の影響もあり、中国株はしばらく低迷相場が続いている。10月にも最高指導部の交代を控え、今後の中国株の見通しはどうなのか、中国株のスペシャリストでTS・チャイナ・リサーチの代表、田代尚機氏が予測する。
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本土を代表する上海総合指数が7月末に2009年3月以来の安値をつけるなど、中国株は悲観に覆われつつある。
まず欧州危機の影響が懸念されるが、今年上半期の貿易収支を見ると、「輸出」は9.2%増と鈍化しているとはいえ、伸びている。欧州向けの減少を米国とASEAN(東南アジア諸国連合)向けがカバーしている格好だ。これによって貿易黒字は拡大しており、それほど悪くないといえるだろう。
問題は海外要因ではなく、国内にある。なかでも「設備投資」は、不動産投資への抑制策が依然続いているのをはじめ、鉄道や道路などのインフラ投資も低水準にある。また、景気の先行きを示すPMI(購買担当者指数)の内訳を見ると、新規受注も生産も減少するなか、在庫が増加しており、在庫調整がまだ進んでいない様子が見て取れる。
小売売上高の伸び率も鈍化しており、頼みの「消費」にも陰りが見られるのは確かだ。
しかし、すでに政府は金融政策と財政政策の両面で対策を打っている。金融政策としては、昨年12月以来、3回にわたって預金準備率を引き下げて資金を供給するほか、6月に続き、7月にも利下げが行なわれ、実質的な金融緩和を打ち出している。
財政政策は、5月23日の国務院常務会議で積極財政を加速させる方針を決定。ここで改めて国家発展に向けた「第12次5か年計画」の重要プロジェクトの実施などが打ち出されたが、なかでも注目すべきは、やりかけとなっている鉄道などのインフラ整備を前倒しで実施すると表明したことである。昨年の高速鉄道事故を機に、鉄道建設に急ブレーキがかけられていたが、いよいよ再開に向けて大きく舵が切られようとしているのだ。
そもそも「第12次5か年計画」では、「2015年までに鉄道総距離を12万kmに拡張する」という方針があり、2010年時点ではまだ9万1000kmにすぎなかった。ちなみに、ほぼ同じ国土面積を持つ米国が約22万kmであることを考えると、中国の鉄道開発の余地はまだまだ大きいといえる。
ましてや中国が内需主導型経済に移行していくためには、地方の都市化が不可欠であり、そのためには鉄道網を張り巡らせることが必要となるのはいうまでもないだろう。
もちろん、鉄道部の資金繰りが悪化しているため、資金面がネックではある。ただし、今後は中央や地方政府の支援拡大に銀行や民間企業からの資金も取り込んでいくと見られるため、鉄道建設は今年下半期以降の目玉になる、と見ている。
※マネーポスト2012年秋号