書籍や雑誌で「2050年の世界」の予測がブームである。しかし、いずれも隔靴掻痒(かっかようそう)の感が否めない。なぜなら、人間にとって一番大切な「性生活」の姿をどれも描いてはいないからだ。本誌は「過去と現在を知れば未来が見える」という視点から、詳細な統計データと専門家の分析に基づいて、「2050年の日本人のSEX」をシミュレーションした。
現在、女性の平均寿命が85.9歳で世界2位、男性が79.4歳で世界8位の長寿国・日本。国連の人口推計によると、2050年には平均寿命はさらに5歳以上も伸びている。
65歳以上が占める割合も2010年の23.1%から38.8%に、75歳以上は11.2%から24.6%に倍増。まさに高齢者だらけの国になるわけだが、それに伴って“高齢者のセックス”に対する考え方も、“セックス寿命”も大きく変化する可能性がある。
浜松町第一クリニック院長の竹越昭彦氏はこう予測する。
「かつては『いい歳していつまでもセックスするなんてみっともない』という固定観念がありましたが、『セックスは心にも体にもいい』という情報が広がったおかげで、高齢者のセックス頻度は明らかに増えています。この傾向はますます強まるでしょう。バイアグラなどの薬の充実も手伝って、70代、80代でも現役で性を謳歌できる時代になる」
ただし、女性の出産可能な年齢は変わらないようだ。
「結婚年齢が上がって晩婚・晩産化していますが、女性の妊娠力自体は昔から変わっていない。20代の後半から徐々に下がり始め、30代半ばから急速に落ちていく。寿命が伸びたからといって、閉経年齢は変化していません」
と国立成育医療研究センター不妊診療科医員の齊藤隆和氏は解説する。ただし、山中伸弥・京大教授のノーベル賞受賞で注目を浴びているiPS細胞の実用化により、出産の概念が大きく変わる可能性もあるという。
「すでに動物レベルではiPS細胞を卵子にも精子にも変化させることに成功している。倫理面の問題を一切無視すれば、臨床応用までの技術的なハードルはまだ多々あるが、2050年には何歳の人でも若々しい自分の精子や卵子をつくりだすことができ、代理母などによって超高齢で赤ちゃんを授かることも可能になっているかもしれない」(前出・齊藤氏)
70代で初孫どころか第1子、なんてことが当たり前の世界になりそうだ。
※週刊ポスト2012年11月2日号