自民公の3党合意で、近いうちに行われることになっている解散総選挙。世論調査を見る限りでは、自民党政権が誕生する可能性が高い。では、もしもそうなったとしたら、自民党は現在の危機的状況にある日本経済をどう立て直すのだろうか。経済評論家・森永卓郎氏が『メルマガNEWSポストセブンVol.36』にて、自民党の経済対策を分析する。
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今年8月31日に自民党政務調査会と経済・財政・金融政策調査会が連名で公表した「日本経済再生プラン ~『産業投資立国』と『価値の創造拠点』を目指して~」は、消費税増税時の景気失速への危機感を認識し、その対応策を明示している。
第一は、財政出動だ。「予算の配分を、『短期のバラマキ』から、技術開発や人材育成など、日本の競争力につながる『将来への投資』に大胆に転換します。具体的には、国土強靭化計画の効果的な実施などにより、国内の有効需要や雇用の創出を図ります」と日本経済再生プランには書かれている。もちろんこれは、自民党が一貫して強調している10年間で200兆円(民間投資を含む)の国土強靭化投資のことだ。投資の半分が公共投資だとしても、年間10兆円の投資となる。いまの公共投資が5兆円程度だから、公共投資を10年間、3倍にするという計画だ。公共投資拡大に関する賛否は分かれるが、実施されれば強力な景気拡大効果を持つことは間違いない。
もう一つは、金融緩和だ。日本経済再生プランの記述は以下のとおりだ。「デフレ・円高から脱却するため、従来の常識を超えた大胆な金融緩和措置を実行します。政府・日銀のさらなる連携強化を図り、金融緩和の実効性を高めるため、政府・日銀の物価目標(2%程度)協定の締結、日銀による外債購入など、日銀法の改正を視野に、大胆な金融緩和措置を講じます」。この一文だけで自民党の意図は十分伝わってくる。日銀法を改正して、物価目標を政府が定める形のインフレターゲットを導入するのだ。2%という目標は、政府と日銀の共同目標という形式を採るが、事実上政府が決める。そして日銀は、その目標を達成するまで無制限の金融緩和を行う。いま日銀がやっているような10兆円単位の小出しの資金供給ではなく、100兆円単位の資金供給が行われることになるだろう。これこそが「従来の常識を超えた大胆な金融緩和措置」なのだ。