民主・自民両党は、臨時国会の開会時期、特例公債法案、さらには解散の確約と、激しい攻防戦を繰り広げているかのように見える。が、それは見せかけにすぎない。この2大政党は“敵失”を罵り合うことで、自らの足下がガタガタなのを何とか目立たせないようにするのに四苦八苦している。内情を知る政治記者と議員秘書が「お寒い内情」を暴露する。
司会:衆院の過半数割れまでマジック5に迫っている民主党は崩壊寸前。離党食い止めのために札束で議員の頬を叩き、竹島の領有権を巡る対応が問題視されて離党した(*注)土肥隆一・代議士まで会派に復帰させてマジック6に戻した。
【*注】2011年2月、土肥氏は竹島領有権の放棄を日本に求める「日韓共同宣言」に名を連ね、韓国の国会で韓国の議員らと記者会見を行なった。土肥氏は「日韓共同宣言は韓国側が勝手に作成したもので、内容についての事前の協議・確認は全くなかった。署名もしていない」と説明した。
政治部記者A:土肥氏は民主党保守派から猛批判を浴びて離党した。そんな人物を復帰させれば自民党の格好の標的になる。自民党執行部は大喜びだ。
民主党秘書B:うちの党は政権を取ってから有権者の視線に非常に鈍感になっていると感じる。土肥さんは無所属のままでも不信任案に反対しないからわざわざ会派に入れる必要はないのに、菅グループの元代表という派閥の力学が働いて輿石幹事長はほとぼりがさめたと判断した。
そして党内に不満や批判があればカネで押さえ込む。執行部は年間1000万円の支部交付金とは別に、8月と10月に議員1人300万円ずつ計600万円配っている。
8月の分は消費増税法案に賛成したご褒美で、造反組にはないはずだったが、カネをケチって離党されると困るから、党員資格停止処分が明けた後、樽床伸二・幹事長代行(現・総務相)が党に残った造反組議員に200万円ずつ手渡しした。
議員の1人が、「なぜ、100万円少ないのか」と尋ねると、「2か月間の党員資格停止中は支部の活動はしていないから、その分を削った」という説明だったそうだ。造反のペナルティが臨時ボーナス100万円カットなら安いもの。これではどんどん党内の統制が取れなくなっていく。
自民党秘書C:増税のご褒美があるだけいい。わが党は与党時代には年間1000万円だった支部交付金を600万円に減らされ、若手議員への派閥のモチ代、氷代も30万円と、かつてと一桁違う。実は、消費増税法案の際に「ここで成立させれば経団連から100億円ぐらいの選挙資金を借りることができる」という話が流れた。
増税慎重派も背に腹は代えられないから賛成したのに、その後も党の財政事情は何も変わっていない。代議士も騙されたといっています。うちの事務所では年間5回パーティを開いているが、全然足りないから、代議士から年内にもう1回開けといわれている。しかし、もうパー券を買ってくれるところがない。選挙準備どころじゃない。
政治部記者A:選挙資金の調達は安倍執行部の最重要課題。かつて小沢一郎氏が自民党幹事長だったときには経団連を恫喝して200億円の資金を出させたが、石破幹事長にはそんな芸当はできない。だから安倍総裁が経団連との懇談会で、なんとか献金を復活させようと「原発ゼロにはしない」とご機嫌をとっていた。
※週刊ポスト2012年11月2日号