兵庫県尼崎市の民家から3人の遺体が発見され、さらに多数の行方不明者が出ている事件。その中心人物されているのが角田美代子被告(64才)だ。
この事件に関しては、少なくとも3つの家庭が関わっているとされている。いずれの家庭も周囲では評判の仲の良い一家だった。それが、ある日突然、角田被告がその家庭に出入りするようになると、子供が親を死ぬほど痛めつけたり、きょうだい同士が壮絶な殴り合いを繰り広げたりするようになる。そしてひとりいなくなり、ふたり消え、誰もいなくなる。
一体なぜ、次々にこのような事態が起きてしまったのか? 宗教やマインドコントロールに詳しい紀藤正樹弁護士はこう分析する。
「マインドコントロールは宗教など外に向かって行うよりも、家族間などで対立を煽ることで、簡単にできるものなんです。家族間の問題は他人に相談することが難しいどころか、周りの目を気にすることで余計に窮屈になってしまうことがあります。家族はそれだけ難しいバランスによって成り立っています」
虐待、DVのほか、昨今、親の所有物としてコントロールされてきた子供たちが増殖していることが社会問題となっている。事件化こそしていないが、これもまた現代社会が抱えるひとつの闇といえよう。
「だからこそ、角田被告のような人物が内側から煽っていけば、家族関係が簡単に壊れることもある。殴り合う事態にまで至ることも、決してハードルの高いことではありません」(前出・紀藤弁護士)
今回と同じような事件が、2002年3月に発覚した福岡県北九州市の監禁連続殺人事件だった。主犯とされ、昨年12月に死刑が確定した松永太死刑囚(51才)は、内縁の妻だった緒方純子受刑者(50才・無期懲役)を使って緒方受刑者一家に取り入ると、一家を監禁。1996年2月から1998年6月のわずか2年4か月足らずで、計7人が家族間で殺し合うという前代未聞の事件となった。社会心理学が専門の立正大学・西田公昭教授が説明する。
「松永死刑囚も角田被告も、まず自分の味方となる人間を探します。松永死刑囚の場合は緒方受刑者、角田被告の場合は瑠衣被告であり、大江和子さん(遺体で発見)の次女の元夫・川村博之被告(42才)がそうです。
松永死刑囚も角田被告も味方につけた人物の弱みや不満を見つけ、そこに取り入って責めたり褒めたり、アメとムチを使っていく。そして、その味方からさらなる味方を作っていき、自分のいうことを聞く人を増やし、夫婦間、親子間で裏切らせたり、憎しみ合わせたり家族の絆を切っていくのでしょう」
その際、最大のツールとなるのが“嘘”だ。角田被告は、一見豪華に見えるマンションに住み、客に食事をふるまい、誘い込もうとしていたが、実際には他人名義で借金まみれの生活を送っていた。角田被告は、いったいどんな心理状態にあるのだろうか? 前出・西田教授が説明する。
「嘘をつくことに何のためらいも抱かない反社会性人格障害といえるでしょう。まったく相手のことを考えずに権謀術数を使い、100%自分の道具として使うために、暴力さえも何とも思っていない。自分の欲望を遂げるためには手段を選ばないタイプの人格です」
※女性セブン2012年11月8日号