『グローバル・ソブリン・オープン』(グロソブ)が大幅に残高を減らす一方でその受け皿として為替ヘッジあり先進国&新興国債券ファンドが好調だという。運用方法や投資対象はそれほど変わらないが、何が違うのか、リッパー・ジャパンのファンドアナリスト、篠田尚子氏が解説する。
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そもそも、為替ヘッジとはどういうものなのか。海外の株式や債券を投資対象とするファンドは、外貨建てで運用されるのが一般的だ。その外貨が円に対して上昇すれば、株式や債券で得られるキャピタル・ゲインやインカム・ゲインに、為替差益が上乗せされる。
逆に、円に対して下落すれば為替差損が発生し、キャピタル・ゲインやインカム・ゲインが目減りする。為替差損が大きければ、トータルで損失が出ることもある。こうした為替差損が発生するリスクを回避するために、為替ヘッジという手法が用いられる。
通常の為替ヘッジは、対象通貨の為替予約(将来のある時点で一定の為替レートでの交換をする契約)を利用する。実際に行なわれる取引は、対象通貨の円に対する空売りだ。例えば、米ドル建ての資産に投資している場合、ドルの空売りをしておけば、ドルが対円で下落しても、空売りポジションに利益が発生する。その利益で、ドル建て資産のドル下落分の損失を相殺するのである。
したがって、為替ヘッジにかかるコストは、理論上、空売りポジションを取るコストと同じになる。空売りポジションのコストは、2通貨間の金利差に等しくなり、円とドルの金利差が1%あれば、為替ヘッジのコストは1%になる(騰落率の1%に相当)。
ここで、注意しなければならないのは、為替ヘッジを付けると為替差損のリスクは取り除けるが、為替差益のリターンが期待できなくなる点だ。先ほどのドル/円の例で言うと、ドルが上昇しても、空売りポジションで損失が発生するため、ドル建て資産のドル上昇分の利益が相殺されてしまうのだ。つまり、為替ヘッジは、リスクとリターンを共に小さくするのである。
先進国債券ファンドと新興国債券ファンドにおいて、「為替ヘッジあり」のタイプが高い利回りを記録している理由は、円高が続いているからに他ならない。高利回りの海外債券のインカム・ゲインが、為替差損を蒙ることなく、投資家に還元されているのだ。
さらに、もうひとつ重要なポイントがある。世界的な超低金利によって、為替ヘッジにかかるコストが低くなっている点だ。ドル/円の場合、短期金利の差がほぼ0%となっているので、為替ヘッジのコストは実質的にゼロ。為替ヘッジのコストがリターンに影響することはほとんどなくなっている。
※マネーポスト2012年秋号