10月25日、石原慎太郎氏(80)は会見を開き、新党結成と東京都知事の辞任を発表した。
会見では民主党政権への批判を数多く口にしたが、むしろ慌てたのは自民党だった。石原氏は会見で、「今の自民党は評価しない。戻る気もない」と言い放ち、古巣・自民党とは一線を画す姿勢を鮮明にした。
東京選出の自民党ベテラン議員は、「話が違う」と怒り心頭の様子だ。
「慎太郎さんは2年前から新党結成を求められてきたが、息子の伸晃が自民党総裁になる目が残っていたためにこれまで引き延ばしてきた。伸晃が総裁選に勝っていれば新党もなかったはず。石原新党が東京で候補者を大量に擁立すれば自民党と競合する。息子が負けたから新党なんて、我々への意趣返しも甚だしい」
安倍晋三総裁誕生で気勢を上げる新執行部も危機感をあらわにする。
「現在の自民人気は、安倍さんが中国や韓国に対して強硬な姿勢を見せてきたことが大きい。それが野田政権の弱腰ぶりとの比較で保守層の支持を得た。だが、尖閣の購入をぶち上げた慎太郎さんが相手では、明らかに分が悪い。安倍さんのセールスポイントを全部持って行かれる」
自民党幹部はそう吐露して、安倍人気の“薄さ”に不安を募らせた。
自民党から見ればそうだろう。だが石原氏にしてみれば、伸晃氏が総裁選に敗れて幹事長を退任したことで「自民党の軛(くびき)」を解かれ、思い残すところなく「最後の挑戦」に身を投げ出すことができたということになる。
※週刊ポスト2012年11月9日号