3連敗後の3連勝という劇的な展開で巨人が日本シリーズ進出を決めたセ・リーグCS(クライマックスシリーズ)。その第3戦のテレビ中継で“主役”になった人物がいた。巨人のキャプテン・阿部、中日の頭脳・谷繁をも凌ぐ存在感を見せつけたのは、政界引退を決めた森喜朗・元首相だった。
夜7時から始まった地上波中継。バックスクリーンからの映像には、バックネット裏最前列に、腕組みをしてデンと腰を下ろす森氏の姿が。周囲はユニフォームを着てオレンジ色のタオルを振り回す巨人ファンが多いだけに、スーツ姿の森氏はなおさら目立つ。
ネット上では、テレビ観戦中の視聴者が、
「森サンがいる!」
「ポップコーン食ってるw」
と、「森氏の実況中継」が行なわれた。そんな注目の的となっているのを知ってか知らずか、森氏の“観戦スタイル”は不思議だった。 4回表、森野がヒットを放ったその時、歓声が上がる場内をよそに森氏はうつむいたまま。
「もしかして、寝てる?」
視聴者がそう思ってしまうのも無理はなく、4回裏に、1対3と巨人が苦しい状況下で村田がホームランを打っても、反応がない。そして、6回裏に高橋由がホームランを打って同点になるが、その時すでに森氏の姿は画面から消えていた。せっかくの特等席にもかかわらず、すでに球場を出ていたのだ。
東京ドームには、「バルコニー席」「プレミアムラウンジ」などのVIP席がある。「警備の面でも、VIPにはできるだけそちらで観戦していただいている」(球場関係者)というが、森氏は、なぜバックネット裏にいたのか。
森氏に尋ねると、「(チケットは)個人的にいただいたもの」とのことで、
「巨人ファンです。(地元の)石川県出身の高木京介選手を応援しています。(途中退席したのは)次の予定があったからです」
と、丁寧な回答をいただいた。森氏が応援する高木はこの試合では6回表に力投。森氏が帰った後の7回表に交代となった。
※週刊ポスト2012年11月9日号