ビジネス

かつてヒトラー独裁への批判が封殺された背景に大衆的な人気

 1980年代後半、米証券会社ソロモン・ブラザーズに入社し、同社の高収益部門の一員として活躍し、巨額の報酬を得た後に退社した赤城盾氏。赤城氏が、民主主義と経済の関係について解説する。

 * * *
 経済成長が止まれば、資本主義に対する信頼が揺らぐ。貧富の格差の拡大が、その不信を増幅する。そして、有効な解決策を示せずに、党利党略に奔走する「民主主義的な」政治家に失望した大衆は、独裁的で強力なリーダーシップに活路を見出す誘惑に駆られてしまう。

 民主主義が捨てられるプロセスは、かくも単純にして明快である。しかも、始末の悪いことに、独裁者は時に国民の期待によく応えた。

 ヒトラーは、時代を先取りした大胆な公共事業によって、どん底にあったドイツ経済を立て直し、再軍備を果たして大いに国威を高揚させた。我が帝国陸軍も、中国大陸で連戦連勝、瞬く間に主要都市を占領した。

 多くの善良なドイツ人がヒトラーにいかがわしさを感じていただろうし、軍人が威張り散らす世の中を毛嫌いした日本人も多かったはずである。しかし、圧倒的な実績がもたらす大衆的な人気が批判を封殺してしまう。

 あらゆる商業的なメディアは、大衆迎合的にならざるを得ない宿命の下にある。要するに、買い手のつかない情報は流通しないのである。

 もちろん、少数意見の買い手もいるにはいるが、売り上げを伸ばして社員の待遇をよくするためには、多数意見を売ったほうがいいに決まっている。のみならず、飛ぶ鳥を落とす勢いのナチスや帝国陸軍の不興を買って取材に差し障りの出ることを恐れるから、そもそも批判記事は掲載されにくい。

 このように回顧した上で、政治家をタレント化させて視聴率や部数を伸ばそうとする今の日本のメディアの状況を見れば、我々がいかほど進歩したものか、はなはだ心もとない。幸か不幸か、ヒトラーのように圧倒的な実績を上げて数字が稼げる政治家が現われなかっただけではあるまいか。

※マネーポスト2012年秋号

関連記事

トピックス

俳優の竹内涼真(左)の妹でタレントのたけうちほのか(右、どちらもHPより)
《竹内涼真の妹》たけうちほのか、バツイチ人気芸人との交際で激減していた「バラエティー出演」“彼氏トークNG”になった切実な理由
NEWSポストセブン
ご公務と日本赤十字社での仕事を両立されている愛子さま(2024年10月、東京・港区。撮影/JMPA)
愛子さまの新側近は外務省から出向した「国連とのパイプ役」 国連が皇室典範改正を勧告したタイミングで起用、不安解消のサポート役への期待
女性セブン
11月14日に弁護士を通じて勝田州彦・容疑者の最新の肉声を入手した
《公文教室の前で女児を物色した》岡山・兵庫連続女児刺殺犯「勝田州彦」が犯行当日の手口を詳細に告白【“獄中肉声”を独占入手】
週刊ポスト
チョン・ヘイン(左)と坂口健太郎(右)(写真/Getty Images)
【韓国スターの招聘に失敗】チョン・ヘインがTBS大作ドラマへの出演を辞退、企画自体が暗礁に乗り上げる危機 W主演内定の坂口健太郎も困惑
女性セブン
第2次石破内閣でデジタル兼内閣府政務官に就任した岸信千世政務官(時事通信フォト)
《入籍して激怒された》最強の世襲議員・岸信千世氏が「年上のバリキャリ美人妻」と極秘婚で地元後援会が「報告ない」と絶句
NEWSポストセブン
「●」について語った渡邊渚アナ
【大好評エッセイ連載第2回】元フジテレビ渡邊渚アナが明かす「恋も宇宙も一緒だな~と思ったりした出来事」
NEWSポストセブン
三笠宮妃百合子さま(時事通信フォト)
百合子さま逝去で“三笠宮家当主”をめぐる議論再燃か 喪主を務める彬子さまと母・信子さまと間には深い溝
女性セブン
氷川きよしが紅白に出場するのは24回目(産経新聞社)
「胸中の先生と常に一緒なのです」氷川きよしが初めて告白した“幼少期のいじめ体験”と“池田大作氏一周忌への思い”
女性セブン
多くのドラマや映画で活躍する俳優の菅田将暉
菅田将暉の七光りやコネではない!「けんと」「新樹」弟2人が快進撃を見せる必然
NEWSポストセブン
阪神西宮駅前の演説もすさまじい人だかりだった(11月4日)
「立花さんのYouTubeでテレビのウソがわかった」「メディアは一切信用しない」兵庫県知事選、斎藤元彦氏の応援団に“1か月密着取材” 見えてきた勝利の背景
週刊ポスト
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
「SUNTORYドリンクスマイルBAR」
《忘年会シーズンにこそ適正飲酒を》サントリーの新たな取り組み 自分に合った “飲み“の楽しさの発見につながる「ドリンク スマイル」
NEWSポストセブン