ゴルフ日本オープンは40歳の久保谷健一が優勝。次週のブリヂストンオープンでは、当初首位を走ったのは43歳の藤田寛之。その藤田をかわし優勝したのは、44歳の谷口徹だった。
今年、これまで行なわれた20試合の半分は外国勢が勝ち、残り10試合のうち6勝を40歳以上の選手が占めている。なぜか“不惑”の活躍が目立つのである。
クラブやボールの進化もベテランを後押ししたが、それだけではない。ある40代のプロはこういう。
「コースセッティングが変わってきたからでしょうね。石川遼選手が賞金王になった2009年の頃とは明らかに難しさが違いますから」
石川の魅力は、ドライバーをかっ飛ばし、バーディーを量産する飛ばし屋ゴルフ。そのためラフは短く刈られる傾向が増えた。
「石川の飛距離に合わせ、彼が曲げやすい左側のラフは広く刈り込んだ、という噂も流れたほど。石川が勝って盛り上がることを当て込んだ、主催者側の要望だったといわれます」(ゴルフ担当記者)
芝が刈り込まれると当然難易度は低くなる。その影響からか、しばらく日本ツアーは技術レベルの高い韓国選手や外国勢が席巻した。
「このままでは日本のプロのレベルが世界から置いて行かれると慌てた日本ゴルフツアー機構が、コース設定を元に戻したため、粘り強くアプローチやパットでパーを拾いながら、見栄を張らずに勝つゴルフに徹するベテランが上位に来るようになった」(同前)
確かにドライバー飛距離のランキングでは、藤田(283.45ヤード=60位)も谷口(270.43ヤード=108位)も下位にとどまっているが、正確なアイアンショットや小技には定評がある。
ゴルフ評論家の菅野徳雄氏はこう語る。
「日本のプロゴルフ界は、師匠の技を盗んで力をつける厳しい徒弟制度で発展してきた。藤田や谷口はその最後の世代。今の学生アマ出身の選手は、先輩たちが築いてきた技術を継承することもなく、ジュニア時代から注目されチヤホヤされてきた。設定の厳しいコースでは、精神力がモノをいう。その意味でもベテランが勝っているのは頷けます」
2年間優勝から遠ざかっている石川を横目に、頑張るおじさん選手たちに、むろん惑いはない。
※週刊ポスト2012年11月9日号