石原慎太郎氏(80)が新党を結成し、国政に打って出ることを10月25日に発表した。
石原新党の登場で次の総選挙の構図は大きく変わってくる。東京は石原新党、北関東や南関東が基盤のみんなの党、東北に強い地盤を持つ国民の生活が第一、北海道の新党大地・真民主、東海の減税日本、近畿をはじめ西日本は維新という具合に、ブロックごとに第3極が民自と戦う「地方vs中央」の構図がより強まる可能性がある。
総選挙がこのような構図とすれば、石原氏の後任を選ぶ東京都知事選は一層重要な意味を持つ。都知事選は知事辞任から50日以内に実施されることから、12月上旬になる可能性が高い。石原氏は猪瀬直樹・副知事を後継指名したが、選挙戦は大乱戦が予想される。
まず踏み絵を迫られているのが自民党だ。石原氏が自民党に弓を引く形で国政転出を表明した経緯からして、石原氏が“後継指名”した猪瀬氏を自民党がすんなり推薦するとは考えにくい状況だが、来年の都議選を控えている自民党都議団には石原シンパが多い。自民党東京都連の議員は「猪瀬氏は自民、公明に太いパイプを持つ。総選挙後の石原新党取り込みをにらんで、自公が猪瀬氏を担ぎ、総選挙に負けたくない民主党が対立候補を立てずに猪瀬氏に相乗りする可能性もある」と見る。そうなれば既成政党は石原氏に白旗を揚げたも同然だ。
一方、民主党内では「独自候補を立てないと総選挙で総崩れになる」と、野田首相に近い蓮舫・元行政刷新相や長妻昭・元厚労相の名前が挙がっているものの、いずれも出馬に消極的とされる。
もうひとつは第3極候補の動向だ。前回知事選で石原氏と戦った東国原英夫・前宮崎県知事が再出馬するかどうかが注目される。維新の会の目玉候補である東国原氏が出馬を見送れば、次期総選挙での「石原新党―維新選挙共闘」がしっかり結ばれていると考えられるからだ。第3極の一部には舛添要一・元厚労相の擁立論があり、出馬すれば一気に有力候補に浮上する反面、第3極連合の形成には不安定要素だ。
また、「12月上旬総選挙」を睨んで綱引きを繰り広げている与野党の解散時期をめぐる攻防も、都知事選挙がそのタイミングとなることから、すでに民自両党では戦略の練り直しが検討されている。まさに総選挙とその後の政界再編を睨んだ打算と思惑が、「石原辞任」を機に入り乱れているのだ。
石原氏が自ら石となって飛び込んだ永田町の水面は、激しく波打っている。
※週刊ポスト2012年11月9日号