5つの家族を離散させ、次々と配下に加えていった尼崎連続怪死事件の中心人物・角田美代子被告(64)。それら家族の息子や娘のうち、特に目をかけた人間は養子として角田ファミリーに加えてきた。
高松市の一家を離散させた際には、一家の娘である瑠衣被告(27)を引き取って息子と結婚させている。当時、瑠衣は県内屈指の進学率を誇る高松高校に在学していた。角田家をよく知る人物が証言する。
「一家に乗り込んだ時から瑠衣被告には目をかけ、実の両親を直接殴らせるなどして洗脳した。次第に角田被告のことを実の母のように慕うようになっていきました。一方の角田被告もいつしか、『この子はできるねぇ、私の後継者にしたいわ』と語るほど可愛がっていましたね」
捜査関係者によると、角田被告は養子縁組などで離散家族の一人を新たな家族として引き入れる際、その子に新たな名前を授けるという。角田家族をよく知る地元人物もこう証言する。
「美代子さんは瑠衣のことは“ハナ”とよんでいました。なんだか気味が悪くホーリーネーム(オウム真理教で出家信者へ贈る祝福名)みたいでしたね」
角田被告が改名させたのは瑠衣被告だけではない。滋賀県彦根市で離散家族の一人を息子として養子縁組した際にも、その子に角田被告が寵愛する“イケメン次男”と一文字違いの名前を名乗らせた。他にも養子縁組の際、角田被告によって、違う名前を名乗らされていたと思われる女性がいる。
捜査関係者が語る。
「ある家族では四男の嫁を離婚させて別の兄弟と結婚させるという常人には理解できない命令があった。角田被告は、もともとの血縁や姻戚関係を解体した上で、ファミリーの新たな一員となることを強いたようですね」
カルト的洗脳手法は誰から教わったのか、それとも生来生まれ持った女王蜂の習性なのか。
※週刊ポスト2012年11月9日号