ユニクロなどを展開するファーストリテイリングは、国内アパレル企業初となる売上1兆円超を2013年8月期連結業績で達成できる見通しだと発表した。だが、国内のユニクロ事業の売り上げは頭打ち状態にある。こうした状況の背景を、大前研一氏が解説する。
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今や日本を代表するカジュアル衣料ブランドとなったユニクロなどを展開するファーストリテイリングは、2013年8月期連結業績で国内アパレル企業初の売上高1兆円超えを達成できる見通しだと発表した。
同社の柳井正会長兼社長は、世界市場で年間200~300店を出店し、国内では9月にオープンした家電量販店ビックカメラとの共同店舗「ビックロ」など新しいタイプの店舗で新しい顧客を掘り起こして、2020年に売上高5兆円を目指すという。
意欲的な経営目標を打ち出し、新機軸に挑戦するのは、もちろん良いことだ。
しかし、いまファーストリテイリングが国内で注力すべき事業は「ビックロ」ではない、と私は思う。なぜなら、主力の国内ユニクロ事業は既存店売上高が2年連続でマイナスとなり、今期予想も前期比0.9%増にとどまるなど、頭打ちになっているからだ。柳井さんも国内事業の現状について「停滞期にある。これを乗り切らなければならない」と述べている。
ファーストリテイリングが国内で直面している問題は、成長期から成熟期に入った類似のアパレルメーカーに共通する問題だ。つまり、ユニクロの商品はベーシックなコモディティ(日用品)衣料である。しかもユニクロの場合は――私も愛用しているが――下着であれセーターであれ、品質が良くて丈夫なので、なかなかくたびれない。
だから、ひと通り普及すると、よそ行きの衣料や1シーズンもてば御の字のファッション衣料とは異なり、どうしても飽和感が出てきてしまう。みんな最初のうちは次々に買うが、一巡したら、あとは少しずつ補充するだけになるからだ。いまユニクロが国内で陥っているのは、そういう現象なのである。
※週刊ポスト2012年11月9日号