4人に1人が65歳以上となる中、各業界では、「高齢者層をいかにして取り込むか」が重要課題となっている。それは「性」にまつわる分野とて例外ではない。これまで「年寄りとは無縁」と思われていたラブホテル業界では、様々な形で高齢者獲得に向けた試みが進んでいる。
格子模様の和風のエントランスを入ると、無人のフロント。入り口のちょっとした段差には手すりが付けられている。真新しく改装されたばかりの客室には、なぜか最新テレビには似つかわしくない、チャンネルだけのシンプルなリモコンが置かれている――。
東京都内にあるラブホテルの一室だが、ここを頻繁に利用するという60代半ばの男性はこう語る。
「ラブホは値段が安いし、昼間から使える。何より誰にも気兼ねすることなく、2人で過ごせるのがいい。ただ、最近のラブホはフロントにスタッフを配置しているところが多いんです。さすがにこの歳での利用は気恥ずかしく、対面したくない。
部屋では何百もの映画を観たり、TVゲームができるというのを売りにしているホテルが増えているけど、テレビのリモコンにいくつもボタンが付いていると、使い方がわからない」
冒頭のホテルは、そんな高齢者の声を反映し、あえてシンプルな仕組みにしているというのである。
※週刊ポスト2012年11月9日号