フジテレビ系バラエティー番組『ホンマでっか!? TV』でもお馴染みの脳科学者・澤口俊之氏。女性セブンの連載「澤口脳学堂」をまとめた新著『脳をこう使えば、ボケない、太らない』(小学館/1365円)の発売を記念して、いまいちど“脳”についてお話を伺った。
──先生、「脳」について教えてください!
「はぁ~、アナタ、脳があるのにそんなことも知らないの。 では、人間の脳は、なぜ“前”にあるか知っていますか?」
──えーと…(モゾモゾ)。
「仕方ないですね。まずは脳の定義からお話ししましょう。『脳』とは、情報を処理して体を動かすための一器官で、神経細胞(ニューロン)によってできているものです。私たちヒトを含む脊椎動物の場合、頭蓋骨に囲まれた神経細胞の集団を『脳』といいます」
──む、難しい…。
「哺乳類は四足歩行で前に進みますね。人間は進化の過程で直立二足歩行をするようになりましたが、こうした“前進運動”をする動物は、さまざまな情報を前方から受け取ることが多いため、『脳』が前のほうに存在するようになったのです」
──ということは、脳が後ろにある動物がいるんですか?
「(ニヤリと笑って)例えばゴキブリですが、動きが複雑で捕らえるのは難しいですよね。実はゴキブリは、脳が2つあるような生物なのです」
──キ、キモイ…。
「ゴキブリは、腹部の後端に尾葉と呼ばれる2本の突起があります。その表面の感覚毛の動きによって、敵が作り出す空気の流れを察知することができるのです。ゴキブリが尾葉に風を受けてから脚が動き始めるまでの時間は、数十ミリ秒(1ミリ秒は1000分の1秒)。この反応の速さを生み出すのが、効率的に組まれた神経回路です。ゴキブリは前方にも小さな脳がありますが、彼らが生き残るには後ろからの情報が重要なため、後ろに神経細胞が集まったというわけです」
※女性セブン2012年10月15日分