週刊ポスト(7月30日発売)がスクープした復興予算流用問題が連日国会を騒がせている。いまや、永田町と霞が関では、流用問題の責任を回避しようと、政治家と官僚の狡猾な「言い訳合戦」が展開されているのだ。
復興予算から調査捕鯨に18億円、それを妨害するシーシェパード対策費に5億円が計上されていた事実は、流用問題の象徴とされた。
水産庁国際課は当初、本誌に対して「石巻はかつて捕鯨の町だった。石巻の再活性化のためにも商業捕鯨を再開したい」と説明していた。が、調査捕鯨の母船は広島港から出港しており、石巻とは何の関係もないと記者が指摘すると、「南極に行っている乗組員さんの中には、石巻周辺の人もいる」「石巻出身者にはクジラを捌くのが上手な人が多い」と説明が二転三転。
最後には、「石巻の人たちは捕鯨の再開を待ち望んでいます」と、石巻市民の声を勝手に代弁する有り様だった。
場当たり的にもほどがあるが、その後も役人は、流用を正当化するためのトンデモ方便を展開していた。
問題を追及する平将明・衆院議員(自民党)はいう。
「ポストの報道後、水産庁に説明に来させたら、『石巻には鯨肉の加工業者があり、復興予算をつけてくれたおかげで、店を閉めなくてすんだと喜んでいた』と説明してきた。ところが実際に現地で調べてみると、石巻の加工業者が扱っていたのは近海で捕ったクジラばかりで、南極のものなどなかった。水産庁はウソをついたんです」
だが、政権側はこの子供騙しに簡単にひっかかった。吉田公一・農水副大臣は、「私も最初、なんで復興に捕鯨が出てくるのかと率直に思った。しかし、石巻が捕鯨の拠点であり、鯨肉の加工業者が存在することを知り、復興の一助になると納得した」(10月18日記者会見)という。これが、担当副大臣の「政治主導」なのだ。
※週刊ポスト2012年11月9日号