ユニクロなどを展開するファーストリテイリングは、国内アパレル企業初となる売上1兆円超を2013年8月期連結業績で達成できる見通しだと発表した。だが、主力の国内ユニクロ事業は既存店売上高が2年連続でマイナスとなり、今期予想も前期比0.9%増にとどまるなど、頭打ちになっている。こうした状況を打破する策を、大前研一氏が提言する。
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ユニクロは、ベーシック衣料としては、世界的にも革命的な企業である。だからリビング用品やインテリア家具でも革命的な商品を生み出せば、大いに可能性があると思うのだ。
たとえば、下駄箱。日本の家の中で、最も不合理で工夫されていないスペースが下駄箱で、大きくなればなるほど履く靴が限られるという不思議な場所だ。しかも、いったん箱に入れて押し入れやクローゼットに仕舞った靴は、二度と出てこなかったりする。季節やTPOごとにわかりやすく整理できるような下駄箱を提案すれば、多くの人が飛びつくに違いない。
風呂や洗面所まわりも、素材が少し変わったくらいで、昔から全く進歩していない。多くの家庭の風呂場にはシャンプーやリンス、ボディソープなどが雑然と置かれているし、洗面所に至っては、歯ブラシ、歯磨き、化粧品、髭剃り、ヘアブラシ、ドライヤーなどが、ガラクタ市のように並んでいる。ここをすっきりさせる商品があれば、絶対に売れると思う。
たとえば、歯磨きは途中から絞り出しにくくなるチューブ型ではなく、シャンプーやボディソープの容器と同じようにポンプを押したら適量が最後まで出てくるものにするなど、いくらでも工夫できる。
リビングルームも同様だ。薄型テレビの普及でようやくテレビ周辺はすっきりしたが、それでも日本のリビングルームは、私が見る限り、途上国以下である。到底、先進国とはいえない。
かつて私は「レイニーサンデー」というコンセプトの商品開発を提案したことがある。日本人のライフスタイルが変わって休日はアウトドアレジャーを楽しむ人が増え、楽器を演奏する人が激減したため、雨の日曜日だけでも楽器に親しんでもらおうと、“器楽のカラオケ”を作ったのである。4トラックや8トラックのテープで自分の得意な楽器を選ぶと、その楽器だけ音が消えて、プロと合奏できるというものだった。
それと同じように、雨の日曜日に風呂場やリビングルームの模様替え、下駄箱やクローゼットの整理などを勧める商品提案があってよい。
家の中は使っていない物とミスマッチな洋服が占拠しており、無駄になっているスペースばかりだ。これらを整理・収納の方法も含めて革命的に変えるような商品を開発すれば、大きな潜在的ニーズを掘り起こすことができるはずだ。
※週刊ポスト2012年11月9日号