男という生き物は、いつも何かに憧れているものだが、埼玉県に住むパート勤務のJさん(49才)の夫(57才)は、あの火野正平に心酔しているという。そんな正平ワナビー夫のエピソードをJさんが明かす。
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娘と私の前で「知ってるか。パパの若いころは火野正平並みにモテたんだぞ」って言う段階でうちの亭主、バカの証明なんだけどさ。
ここのところ、亭主のマイブームは“火野正平”なの。あれほど髪の温存にこだわって、何を言われてもバーコード派だったのに、いつの間にか火野さんをまねてツルツルのスキンヘッドにしてたときは家族中、ビックリしたなんてもんじゃない。ニット帽のコレクションだって日に日に増えて、今じゃスゴイ数よ。
NHKのBSプレミアムで火野さんが自転車で日本を縦断する『にっぽん縦断 こころ旅』っていう番組があるんだけどさ。番組では、火野さんのあとを追っかけて「ファンです」と叫んでるオッサンがたまに映っているんだけど、亭主の夢はあれをやること。
娘の情報によると、番組で読んでもらいたくて何通かNHKに手紙を出してたみたいよ。ところが火野さんは、私たちの住む街をカスることもなく通過。そうとわかったときの亭主のガッカリぶりといったら、娘が「かわいそう」と言ってたわ。
しかし火野さんブームは終わらない。なんと、彼のまねをして自転車を乗り回すようになったのよ。住宅ローン地獄のわが家にスポーツタイプの自転車を買う余裕はないからさ。ヘルメットだけ本格的なものを中古で買って、私のお古のママチャリを1500円出して直して「チャーリー」って名前をつけて。火野さんの自転車の「チャリ男」にあやかったんだそうよ。
「どうだ。名前だけはオレのほうがハイカラだろ」って、どうでもいい自慢しちゃってさ。で、通勤はもちろん、休みの日はかなり遠くまで「ツーリング」して帰ってきたとき玄関開けながら言うことは同じ。「ケツ痛ぇ~」と「腹減ったぁ~」と。
ま、百歩譲って、それは許すとしよう。でも帰りにうちの近くの坂道にさしかかると「人生下り坂、最高!」って叫ぶんだって。
※女性セブン2012年11月15日号