医療の分野では、どんな病気であれ患者がいる限りは、より効果の高い治療法の開発が求められるのが常である。それは「うつ病」や「不眠症」でも例外ではない。国内の「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」に効果的なのがCPAP(シーパップ)療法だ。
SASの患者数は約17万人。潜在患者をあわせれば200万人にのぼるといわれている。慶応義塾大学呼吸器内科の福永興壱専任講師はいう。
「SASは睡眠中に無呼吸を繰り返す病気で、気道上部が塞がって空気が通らなくなる『閉塞型』、脳から呼吸にかかわる筋肉への指令が消失してしまう『中枢型』に大別されます」
SASの95%は「閉塞型」。肥満、加齢による舌根を引き上げる筋肉の老化、扁桃腺や咽頭扁桃肥大(アデノイド)などが要因で、睡眠障害はもちろん日中の眠気、倦怠感、集中力低下など弊害が多い。
「SAS患者は健常人に対して高血圧が2倍、脳卒中・脳梗塞3倍、糖尿病4倍と罹病リスクが大変高くなるので治療が重要です」(福永講師)
CPAP(シーパップ=持続陽圧呼吸)療法は、SAS対策で最も効果が高い。空気を送りこむ機器につながった専用マスクを装着して就寝するので、睡眠中は常にノドの閉塞が防がれる。いびきや呼吸の状態を自動的に感知し、最適な圧力を選ぶ『オートCPAP』が主流だ。睡眠総合ケアクリニック代々木の伊藤永喜医師がその効果を語る。
「治療効果は個人差がありますが、約7割の人が、日中の眠気が軽くなるなどの効果を実感しています。ただ、CPAPは使い続けなければならないので、マスクの不快感や通院の面倒臭さで継続治療に結びつかないことも多い」
病院で行なう簡易検査でAHI(無呼吸・低呼吸指数)が40以上、精密検査なら20以上の場合、CPAP治療が保険適用となる。月1回の通院が条件で、機器のレンタル料と診察料の合計は5000円程度だ。
※週刊ポスト2012年11月9日号