宍戸錠氏がインタビュー会場にやってきたのは予定時刻の30分前。「掲載は冬だって聞いたから」と、秋口にも関わらず、わざわざ冬服を着ての登場。この12月で79歳になる大御所俳優は、気配りもできる真のエンターテイナーだった。
日本の映画史に残るハードボイルドスターが、現在に至るまでの女性経験の数々、そして男にとって本当に大切な物は何かを語る。『週刊ポスト』に掲載された記事のノーカット版を『メルマガNEWSポストセブン』で連載中だが、ここでは11月2日配信のVol.38掲載分からプロインタビュアー吉田豪氏による珠玉のインタビューを公開する。
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──超ベテランですけど、インタビューとかを読むと軽さに驚いたりするんですよ。
宍戸:軽いんですよ、頭の中が(笑)。
──なんでこんなに軽いんだろうと思って。
宍戸:軽いの軽いの!
──そこは、ちょっと重みを出したほうがいいかなとか考えないんですか?
宍戸:重みを出すんなら、すげえぜ。なんでも知ってるから(笑)。
──なんでも?
宍戸:うん。政治問題でもなんでもいいですよ。もう、尖閣諸島は(石原)慎太郎さんがまず悪いんじゃないかな…。
──あっ、まずそこに(笑)。まあ、ここまでの騒動になった発端は石原さんが尖閣諸島を買おうとしたことですもんね。
宍戸:うん。そんなもの、借金だらけのところに二十億出すか?
──銀行だなんだで、あれだけ失敗してるのに。しかし、よく週刊誌も読まれてますね。
宍戸:週刊誌じゃない、テレビですよ。週刊誌は『ポスト』しか読まない!
──そんなサービスしないでいいですから(笑)。慎太郎さんとは付き合いも長いわけですけど。
宍戸:慎太郎さんは昔から知ってますね。芥川賞をもらったときから。偉そうだったなあ…。
──ダハハハハ! 当時から偉そうだったんですか?
宍戸:偉そうなんだよ! 一個上だから、しょうがないけど、裕次郎は一個下なんだよ。ちょうど俺は真ん中だから…まあ、どっちもどっちだけど。「ちゃんとやれよ」「ちゃんとやってるよ」「出版記念のときに行けなくてごめんな」とか、そういう会話です、われわれは。昔の湘南族みたいな。
──そんなに上下関係とかも意識しない感じで。
宍戸:うん。でもね、裕次郎と慎太郎さんがしゃべってるのを見たことがないんだよな、あんまり。
──あ、そうなんですか? 慎太郎さんが過剰に裕次郎さんを意識してますよね。
宍戸:そう。あいつのほうが人気が出やがったからっていうので(笑)。
──あと、裕次郎さんのほうが初体験も早かったことをすごいコンプレックスに持ってて。
宍戸:そうらしいね。彼は障子だろ(※)って(笑)。
(※)石原慎太郎氏の芥川賞受賞作『太陽の季節』より。男子高校生の主人公が意中の女性が待つ部屋の障子に、勃起した男性器を突き刺すシーンが有名。
<続きは11月5日月曜に公開予定>
<宍戸錠氏プロフィール>
ししど・じょう。1933年大阪府生まれ。1954年、日活ニューフェイス第一期生としてトップ合格し、翌55年に『警察日記』でデビュー。タフでハードボイルドな「エースのジョー」として人気を得て、石原裕次郎、小林旭らとともに日活のスターとなる。『拳銃は俺のパスポート』など300本以上の映画に出演してきた。その役者人生を綴った自伝的小説の完結編『シシド 完結編~小説・日活撮影所百周年記念』(角川書店)は11月30日発売予定