華やかな一方で、旬は短く、極めて競争が激しいのが女子アナの世界。作家で五感生活研究所の山下柚実氏が、「看板アナ」を分析する。
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オリラジの藤森慎吾とお泊まり愛を報じられ、話題集中のTBSアナウンサー、田中みな実さん。なにかにつけて、「でもぅー、みんなのみな実だからぁ」と甘えた声を発する。恋愛話も霞んでしまうほど、そのブリッ子キャラが際立っている不思議な人です。
これまでにもたくさんの女子アナが、かわいらしさをウリにしてきました。けれど、ちょっとからかわれたりいじられたりすると、すぐに素に戻り、アナウンサーの立ち位置に逃げ込むのが常でした。しかし田中さんは違う。
どんなにからかわれ、いじめられ、いじられても、まるで意図したかのようにキャラを離さない。最後まで、ブリッ子を貫徹する。 その力の入れようは、もはや「媚び」ではありません。「だってぇ、みな実はみ~んなのみな実だからぁ」と、甘えた声で「男性大衆に接近」する高等戦術によって、ファンを作り、自分自身を差別化し、際立たせて生き延びさせる。いわば、「掟破り」の局アナであり、女子アナの新しいサバイバルの姿ではないでしょうか。
女子アナブームが去った昨今、単にアナウンサーとして原稿を読んだり司会をしても、ちやほやされる時間は短い。何か人と違った際立った個性がなければ、すぐに使い捨てにされ、忘れられてしまう時代です。だからこそ、女子アナは何かに急接近することで、その人たちに親近感を抱いてもらい、同時に自分自身の際立った個性を作ろうとしているのです。
「接近」する対象もさまざま。田中さんは甘い声で「男性」に接近していますが、NHKの有働由美子さんはもっと巧妙に「お茶の間」に忍び込んでいます。NHK朝ドラに続いて始まる「あさイチ」の司会・有働さん。その日のドラマの内容についてベタな感想を率直に述べるのをウリにしています。そのスタイル、「私はみなさんと同じ目線で朝ドラ見てます」という、いわば「お茶の間に接近」するブリッ子術です。
同じNHKでも、「鶴瓶の家族に乾杯」などで司会進行をつとめる小野文恵アナは、またひと味違う接近術。木訥とした語り口、実に普通な髪型にファッション、素顔に近い薄化粧。垢抜けない隣のおねーちゃん風を、立派に維持しています。小野さんのスタイルは、都会派にならず「田舎に接近」する術と言えます。その雰囲気づくりによって、大勢の視聴者に親近感を抱いてもらうのです。
一方、テレビ朝日といえば、前田有紀アナのサッカー選手の似顔絵コーナーが話題。実はプロが描いているのではないか、と疑惑が出るほど。前田さんの場合、似顔絵によってJリーガーに「接近」。それを入口にして独特な持ち味と個性を出すことに成功しています。
テレビ東京の大江麻理子アナはフェリス女学院出身、正当派美人路線を行くかと思いきや、司会の「アド街ック天国」で毎回発する奇妙なダジャレが型となっています。バラエティ番組「モヤモヤさまぁ~ず2」でも、常に天然ボケぶりを発揮し続けて愛されています。大江さんの場合は、「おとぼけに接近」というスタイルでしょう。
女子アナが、アナウンスの技術よりもむしろ、タレントのように個性や演技力を伸ばし、自己研鑽しなければならない時代に入ったということでしょうか。