霞が関官僚のネコババは今に始まったことではないが、これまでも復興予算として計上されてきた予算が、いつの間にか形を変えていた例は多い。
たとえば、30億2000万円をかけた内閣府の新規事業となっている「共生社会政策費」。概算要求の大枠には、「共生社会政策の企画立案に必要な経費」、としか書かれていない。
どんな内容か、内閣府の担当者に問い合わせてみた。
「これは自殺対策関係のものなんですよ。基金事業として地域自殺対策緊急強化基金というのが以前からあったんですが、震災で全国的に自殺者が急増したということで緊急的に昨年度の3次補正(復興予算)で37億円を計上しました。引き続き自治体にも対策をしてほしいということで、来年度も概算要求しているということです」(内閣府自殺対策推進室)
この予算は、被災地に限らず全国都道府県の自殺対策施設の運営や対策強化に使われている。すでに国会でも震災復興との因果関係について疑問が呈されているものだが、昨年度は「地域自殺対策緊急強化事業」という名称だった。それがなぜ、「共生社会政策費」という、あいまいな名目に姿を変えたのか。
「名前を変えたわけではなく、単に項目別に整理する便宜上の理由です。震災の影響で困窮する人は全国に広がっているので、全国への対策も必要になる。これまで自殺対策の基盤整備がなかった都道府県もありますので、震災後の自殺者増加を契機に対策を促すということでもあります」(同前)
自殺者急増を契機とする、という言い方は、ともすると誤解を招く。自殺者対策が必要なのは当然だが、被災地以外もそれを復興予算で賄うことが必要なのか。こそこそ名前を変える前に、見直すべきはそのことだ。
●福場ひとみ(ジャーナリスト)と本誌取材班
※週刊ポスト2012年11月16日号