尖閣問題など中国や韓国と領土問題がこじれて迷走しているが、それと同時に日米関係も極めて重要な問題を抱えている。日本はいつも重大な外交問題の決定に際して、何もかも日米同盟を信じて米国に頼ってきた。しかし、「今の時代に日米共通の目的はもはや存在しない」と語るのは、ジャーナリストのカレル・ヴァン・ウォルフレン氏である。
――日米同盟はポスト冷戦構造に対応していないということか。
ウォルフレン:冷戦時代は中国もロシアも共産圏であり日米共通の敵だったが、冷戦が終結して状況は変わった。
しかし、米国は日本人にこれまで通り、「米国が必要だ」と信じて欲しい。なぜか。米国債を大量に保有しているからだけではない。日本という国が地政学的に非常に重要だからだ。経済的に力を付けている中国と天然資源で潤っているロシアに囲まれている。そのため米国は、日本と中国に友好関係を結んでもらいたくない。ロシアと日本の接近も同様に懸念している。実際は米国が日本を必要としているのだ。
民主党政権発足直後、小沢一郎は、日中関係の促進に向けて、飛行機2機にアーティストや外交官を乗せて中国に赴いた。しかし、鳩山政権が成し遂げようとした中国をはじめとするアジア諸国外交は米国にサボタージュされた。
米国としては、日本が中国と問題を抱えていたほうが都合がいい。その一方で、盛んにTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に日本を誘っている。TPPは経済戦略と思われているが、完全なる政治戦略だ。米国はロシアと中国を経済的に孤立させる道具として使おうとしている。そのことにほとんどの日本人は気づいていない。
――そして今も日米同盟を信じて疑わない。
ウォルフレン:米国は、日本の島のことなどで中国と戦争するつもりは毛頭ない。米ドルの価値を一定程度維持するためには、中国もまた必要不可欠だからだ。
――そもそも在沖縄米軍は日本を守る任務は与えられていないとも指摘される。
ウォルフレン:沖縄の海兵隊は、日本に万が一の危機が起きた時のために駐留しているという建前になっているが、彼らに北朝鮮の攻撃から日本を守ることなど不可能だ。彼らはアラブ首長国連邦とアフガニスタンのための攻撃部隊だ。現在はフィリピン駐留米軍の支援を行なっている。
日本には何の利益もない。それを日本の納税者たちが思いやり予算によって支えている。他国では考えられない。
※SAPIO2012年11月号