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南雲医師 「免疫過剰な体は過剰な軍事国家のようなもの」

 著書に『50歳を超えても30代に見える生き方』(講談社)、『「空腹」が人を健康にする』(サンマーク出版)、『Dr.ナグモ×白澤教授の100歳まで20歳若く生きる方法』(主婦と生活社)などを持つ、国際アンチエイジング医学会名誉会長で、乳房専門『ナグモクリニック』総院長の南雲吉則医師(57才)が、免疫について語る。

 * * *
 最近では、免疫を高めるサプリメントなども人気みたいだけど、免疫を高めすぎるのは、百害あって一利なし。なぜって?

 こういうとわかりやすいかな。免疫過剰な体は、国家予算のほとんどを軍備=免疫に費やしている“軍事国家”のようなものなんだ。秘密警察がうろうろしていて、外部からの侵入者(ウイルスや寄生虫)を常に監視。敵と見るや銃やミサイルを発射し、ときには間違えて敵ではない人や、自国民すらも攻撃してしまう。そんな国、全然安全じゃないよね。

 例えば花粉症も、体が軍事国家化したことが原因のひとつ。免疫って、そもそもウイルスや寄生虫から体を守ってくれるためにあるんだけど、衛生状態がいい現代では、寄生虫はほとんどいない。そこで活躍する場が減った免疫物質は、本来は有害ではない花粉も敵とみなして攻撃し始め、くしゃみなどで花粉を外に追い出そうとし始めた。それが前回お話しした花粉症ってわけ。

 一方、現代もたくさん存在しているウイルスって、自分では栄養を取り入れたり繁殖したりできないんだ。ぼくたちの体の細胞を利用して繁殖しているから、ぼくたちを殺してしまったら、自分たちも死んでしまう。だから、ぼくたちを殺そうとは思っていない。

 にもかかわらず、少量のウイルスを、大量の免疫物質が攻撃する。そして免疫物質がウイルスに当たらずに、ウイルスが住む臓器、例えば肝臓を攻撃してしまった場合、しまいには肝硬変や肝臓がんなどを誘発してしまうんだ。

 更に、攻撃する敵が減った結果、花粉どころか自分の体の細胞すら敵とみなして攻撃し、膠原病や関節リュウマチ、甲状腺の病気、糖尿病の一部、肝炎、貧血、皮膚炎などを引き起こしてしまうこともある。まさに、“危険な軍事国家”だよね。清潔すぎて免疫過剰になることは、こんなにも危険なんだ。

 ただしインフルエンザは別。現代のように、ほぼ無菌状態で育てられた抵抗力の弱い子供たちがインフルエンザにかかると、肺炎や脳症などの合併症を併発して、命に危険が及ぶこともある。特に新型インフルエンザに対しては、大人も子供も免疫を持っていないから、新型ウイルスが体内に侵入すると死に至ることもあって、とても危険なんだよ。

 そうそう、インフルエンザを予防するために、手洗いとうがいで除菌することは、大切なことなんだけど、消毒液でうがいするのは、あまり効果がないともいわれているんだ。なぜなら、口の中にはもともと常在菌という有益な菌がいて、外からの菌の侵入を防いでいる。

 それなのに消毒液でうがいすると、口の中の常在菌が死んでしまって、インフルエンザウイルスや、体に悪い影響を及ぼす悪玉菌が体内に侵入しやすくなるから、逆効果になってしまうこともあるんだね。だから、ある程度の菌と共生することは、すごく大切なことなんだよ。

※女性セブン2012年11月22日号

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