11月に入り、寒さもいよいよ本格化。ふと「おでんが食べたい」という欲求が起こったそんなとき、おでん屋ではなくコンビニに立ち寄るという人も今では少なくないのではないか。
「実はおでんはいまや秋冬のコンビニの主力商品。平均的なコンビニ商品の利益率が約3割といわれている中、おでんは約5割もあり、他の商品に比べて儲かる商品なんです」と語るのはおでん研究家の新井由己氏。
いまやコンビニにとって“稼ぎ頭”となった市場を巡って、早くも激しい“おでん戦争”が繰り広げられているのだ。
『コンビニだけが、なぜ強い?』(朝日新書)著者でコンビニジャーナリストの吉岡秀子氏もこう話す。「全国中に展開されているコンビニ業界は熾烈な競争社会で、客を満足させられなければ近くにある別のチェーンに行かれてしまう。ですから、各社とも他社に遅れをとらないよう常に進化させなければならないのです」
こうして、厳しい競争に晒され、年々質を高めてきた、コンビニおでん。その味はいまや、老舗専門店にもひけをとらないレベルにまで向上しているという。
1915年(大正4年)創業のおでんの名店『浅草おでん大多福』の舩大工栄氏も、コンビニおでんの成長ぶりに舌を巻いている。
「当初は完成度が低く、専門店が気にするレベルではなかったコンビニおでんですが、ひとつひとつの素材に丁寧にこだわるようになり、すごい勢いで質が上がってきています。最近では“うかうかしていたら、数年後にはお客さんを全部取られてしまうかもしれない”という危機感すら持っていて、毎年この時期になると、家族にも協力してもらって各コンビニのおでんを食べ比べているほどなんです」
さらなる飛躍を遂げるべく、各社ともオリジナル新だねの開発や、そばやラーメンなどの麺類の投入、つけだれの種類の充実など、商品改良には余念がない。
※週刊ポスト2012年11月16日号