人気韓流ドラマ『最高の愛』のトッコ・ジン役で女性ファンの心を“ドゥグンドゥグン”させたチャ・スンウォン(42才)。そんな彼がSMAPの草なぎ剛(38才)と共演という夢のような組み合わせに、公演前から話題を呼んでいた舞台『ぼくに炎の戦車を』が、11月3日に初日を迎えた。
100年前の韓国を舞台に、同国の伝統文化を、命を懸けて守ろうとした日本人の物語で、草なぎが扮するのは日韓両国の関係に心を痛める日本人青年教師。スンウォンは、放浪の芸人集団「男寺党」の演技者を演じ、このふたりが国境を超えた友情を築く感動のストーリーが描かれる。
“反日”“嫌韓”の空気が蔓延していた9月初旬、“日韓友好”がテーマの『ぼくに炎の戦車を』の公演開催が発表された。
だが緊迫した状況下ということもあってか、一部からはこんな声が聞こえてきた。
「ちゃんと公演できるのか?」
「抗議が殺到するのでは?」
「会場でデモが起こったら、どうしよう」
どれもが上演を危惧するものだった。加えて懸念されたのが、スンウォンの“反日”疑惑だった。YouTubeにアップされた、彼がかつて出演したテレビ番組の映像が、ネット上でやり玉に挙げられたのだ。
番組内で、「海外で悪いことをするときは“日本人だ”と言えばいい」と発言するスンウォン。その映像の中の彼は、日本を蔑んでいるように見え、「こんな人間を日本に入れるな!」と彼を非難する書き込みが掲示板などに相次いだ。
そうした“反日”の噂がひとり歩きしていたこともあり、舞台関係者の不安は増すばかりだった…。
「8月末に予定されていた制作発表記者会見も、日韓関係の悪化が理由で中止になりました。いよいよ稽古が始まる直前という段階になっても、スタッフの中からは“やはり延期にしたほうがよいのではないか?”という声が、数多く上がっていました」(舞台関係者)
そんな中、9月中旬に日本で稽古が始まった。
「やはり初日はどことなく重苦しい雰囲気が稽古場を包んでいましたね」(前出・舞台関係者)
その夜、親睦を深めるため、草なぎ、スンウォンに加え、香川照之(46才)、広末涼子(32才)らの出演者とスタッフたちで食事会が催された。場所は、都内にある稽古場近くの焼き肉店。どことなくしんみりした空気が漂い、肉のジューッと焼ける音だけが聞こえていた。そんなムードを払拭したのが、スンウォンだった。
「彼は“むしろこういう時期だからこそ、この舞台をやるべきだ”って熱弁をふるったそうです。“ぼくらの舞台を見れば、絶対に両国の間に友情が成立すると、観客に伝わるはず。それに政治と舞台は別。役者はよい芝居をつくりあげることだけ考えましょう”って。
草なぎさんや香川さんは、この言葉に感動して、“絶対にいい舞台にしよう!”って、一致団結したんです。その日の宴は深夜まで続き、草なぎさんも、スンウォンさんと韓国の政治や伝統、芸能について話していたそうですよ」(前出・舞台関係者)
それまで関係者が抱いていたスンウォンの“反日”のイメージ、さらに両国スタッフの間にあった“反日嫌韓”の壁を溶かした“炎の友情”が生まれた夜だった。
※女性セブン2012年11月22日号