ユニクロを展開するファーストリテイリングが、低価格ファッションブランド「g.u.(ジーユー)」の店舗を都心に相次いでオープンさせている。これまで郊外の店舗がメインだったジーユーを銀座、新宿など都心に展開させている狙いとは?
3月に銀座に旗艦店をオープン、10月には新宿、11月にはプランタン銀座のユニクロマルシェ内に店舗をオープンしたジーユー。ファーストリテイリングでは2013年8月期には、60店の新店舗を出す計画で、渋谷など都心への出店を加速させていくという。
「景気低迷などで都心の賃料が下がっているので、都心への出店は以前よりもしやすくなっていることが背景にあると思います。また10月、11月という時期に続いたのは、クリスマス商戦を狙ってさらにブランド力を強化するためではないか」(経済評論家の平野和之氏)
しかし、いずれもすでにユニクロが出店している地域。消費者を食い合うことはないのだろうか。
「ユニクロは、高品質でありながらミドル価格で、ジーユーはユニクロほどの品質はないけれど、低価格という魅力がありますよね。しかも、ジーユーはここ数年でブランド力が強化されている。ユニクロは長期に使うことを考えて買って、ジーユーはその年のトレンドを狙って買う、というふうに使い分けしている人も増えているのではないか。棲み分けは進んでおり、消費者を食い合うことはないでしょう」(前出・平野氏)
ジーユーはユニクロよりも低い価格帯が人気の理由のひとつ。ジーンズやポロシャツは990円、ダウンジャケットは2990円といった設定だ。ブランド展開を始めた2006年当初は、“ユニクロの廉価版”といったイメージが強かったが、前田敦子やきゃりーぱみゅぱみゅをイメージキャラクターに起用するなどし、おしゃれイメージを浸透させていった。
「ゆるパン」などヒット商品も生まれ、2012年8月期は売上高約580億円と、2011年8月期のほぼ倍増。2014年8月期には売上高1000億円を目指すとしており絶好調だ。その一方で伸び悩んでいるのが、ユニクロ。2012年8月期の国内既存店の売上高は2011年8月期を0.5%下回り、既存店の客数は5.3%減と停滞気味だ。つまり、ユニクロの停滞を成長著しいジーユーが補っているという状況だ。
「消費者が低価格慣れしてしまって、最近では低価格でありながら付加価値の高い商品を求めている傾向があります。ユニクロはファストファッションではなく高級品である、というファーストリテイリングの付加価値向上戦略が、こうした低価格志向の需要をとらえきれなくなってきているのがユニクロ低迷のひとつの理由です。ユニクロで他のファストファッションブランドと“低価格勝負”するのはリスクが大きく、ジーユーのほうが低価格の商品を展開しやすいのです。都心には、若者など低所得者の層が多く、そうしたターゲットを狙ってジーユーの出店を加速させているのではないでしょうか」(前出・平野氏)