投資情報会社・フィスコ(担当・村瀬智一氏)が、株式市場の11月5日~9日の動きを振り返りつつ、12日~16日の見通しを解説する。
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先週の日経平均は下落。週末には3週間ぶりに8800円を下回った。米大統領選を控えるなか、週明け5日の東証1部の売買代金は8807億円と10月2日(8832億円)以来の9000億円を下回るなど、週前半はこう着感の強い相場展開となった。
オバマ米大統領再選ならドル安、ロムニー候補勝利ならドル高との見方がコンセンサスとなるなか、オバマ氏の再選を織り込む流れや、ギリシャの改革法案をめぐる不透明感により、為替市場ではじりじりと円高方向へ。
6日の米大統領選の結果は予想通り、現職のオバマ米大統領が再選。市場の関心は直ぐさま上下両院の多数派が異なる「ねじれ」が続く状況での厳しい政権運営への警戒に移った。
米国では来年初に歳出削減や減税の失効を一気に迎え、景気が失速する懸念がある「財政の崖」への対応が難航するとの見方から、大統領選翌日の7日のNYダウは300ドル超の下げで一気にトレンドが悪化。さらに欧州では、ドラギECB総裁が欧州経済の弱さに言及。8日のギリシャ議会では財政緊縮策が可決したが、11日に行われるギリシャ政府の2013年予算案の採決への見極め。一方、ユーロ圏財務相らが、ギリシャ支援の次回支払いを実施するかどうかの判断を11月下旬まで先送りする可能性があるとの一部報道が欧州情勢に対する不安感を高めた。
これら欧米市場の下げに連動する格好から、日経平均はこれまでの保ち合いレンジの下限をうかがう格好となった。ピークを迎えている4-9月期決算については、トヨタ<7203>の通期計画の上方修正など、安心感につながる局面もみられたが、結局はその後の欧米株安や円高の流れが国内のプラス要因を打ち消している。
今週の欧米市場の動向を見極めながらの、不安定な相場展開が続く可能性が大きいだろう。
米国では、オバマ米大統領の再選により、金融規制の強化が現実のものとなる可能性が高まったことで、ファンドの解約などが強まっているようである。タイムテーブルでは、11月15日に向けた「ヘッジファンドの解約45日前告知ルール」への警戒につながりやすく、主要銘柄への売り圧力が強まりそうだ。また、中国では8日から14日まで新指導部を決める第18回党大会が開催されている。政策等が材料視される可能性があるものの、党大会が終わるまでは積極的なポジションは取りづらいだろう。
今週の経済スケジュールでは、国内では12日に7-9月の国内総生産(GDP)速報値が発表される。事前予想の中央値は、前期比年率で3.4%減と、5期ぶりのマイナス成長になる見込み。海外では12日にユーロ圏財務相会合、13日にEU財務相会合、14日に米FOMC議事録、15日にはユーロ圏7-9月GDPのほか、フランス、ドイツ、スペイン、イタリアの7-9月GDPが予定されている。そのほか国内の決算では、メガバンク3行が予定されており、これでピークが通過することになる。
日経平均は先週の下げでサポートとして期待されていた幾つかの支持線を割り込み、下への警戒が強まっている。10月半ばの急伸局面でマドを3つ空けた「三空」についても、マドを空けての下げで、そのうち2つを埋めている。一目均衡表では雲下限を割り込み、今週には雲がねじれを起こす位置に来る。トレンドが出やすい日柄のなか、欧米市場の動向次第では、下へのバイアスが強まる展開には注意したい。
そのほか、政局の焦点である衆院解散・総選挙の時期を巡り、首相は環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉参加を表明し、その直後に衆院解散に踏み切ることを検討していると一部報じられている。自民党や日本維新の会などの政策などに関連する材料株への物色が意識されそうである。