1331人斬りのこの男は妻子がいてもお構いなし。目の前の女性がタイプなら直球勝負。それが言葉の通じない相手でも──。宍戸錠氏(78)が、ブロードウェイ女優と新宿で過ごした夜を語った。『メルマガNEWSポストセブンVol.39』に掲載されたプロインタビュアー吉田豪氏による珠玉のインタビューから一部を公開する。
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宍戸:俺の中学時代からの友人で金森馨っていう、劇団四季の舞台装飾やっているヤツがいるんですよ。その金森といえば、数十年前『ウエストサイドストーリー』なんていうのが最初に来日したとき、ヤツが美術をやっていて、俺に電話をかけてきた。あれに出てる女の子たちが畳の上でご飯を食べたいって言うんですよ。それで金森から「おまえんちに畳はある?」って言われて、そのころは目黒の150坪ぐらいの古い一軒家に住んでたから「畳はあるよ」って言ったら、どうしても畳の上でご飯を食べる日本人の姿が忘れられなくて、あれを実際にやりたいっていう女が三人いたんだよ。
──で、その三人が家に来たんですか?
宍戸:うん。俺もそのころカミさんと子どもも一人ぐらいいたのかな? 「いいよ、来いよ」って。カミさんに言ったら、「じゃあ、鍋を囲むの?」って「それは違うんだよ。鍋を囲むっていうんじゃなくて、座布団を敷いてお膳を出してやるんだ」って。そしたら、その彼女たちが感激しちゃってね、「日本の料理って、こんなに美味いんだ」って。「当たり前だ。俺んちはハンバーガー売らねえから」って言いながら、腹ん中で、こいつはイケるなとか考えてね。
──家に呼んで、そこに奥さんがいるのに(笑)。
宍戸:それで「じゃあ違う畳を教えてやるよ」「食べる以外にも畳が必要なんだ」って(笑)。「日本はこういうラブホテルっていうのがあるんだよ。そこではセックスもしなきゃいけねえんだぞ」って、最初から言ってますから、僕は。そしたら「じゃあ私行くわ、したい」って。
──したい(笑)。
宍戸:それで行って。そしたらその女の子が俺にピストル型のライターをくれたんだよ。「なんで俺の商売を知ってるんだよ? ガンマンだって」と。これもビックリしたね。それで時計を買ってやって。あのときはどこに行ったんだろうな。あれだ。新宿の新宿通りを伊勢丹からこう来て、ホテルの中に入ると「おなりー!」って太鼓を叩いて歓迎してくれるラブホテルがあったんだよ。
──そんな和風の店があったんですか!
宍戸:うん。それが一時流行ったんだよ。
──そんなに歓迎されても入りづらいですよ。
宍戸:いやいや、あれはワクワクするよ、意外に。なにしろ、「ドーン、おなりー!」って。「すげえだろ、これが昔の、まず、うちに入ってきたことを、ありがとうっていうことなんだよ」と教えてやったんだ。
──通訳してあげたわけですね。
宍戸:いや、英語なんか、俺できねえから。
──ダハハハハ! できないけど口説ける。
宍戸:うん、口説ける(キッパリ)。それは11月30日に出る俺の本『シシド 完結編』を読むとよくわかる、完璧によく書いてあるから。
──その話が続編に登場するんですね。
宍戸:ええ。それは読んでください。
<※この続きは11月15日木曜に掲載予定>
<宍戸錠氏プロフィール>
ししど・じょう。1933年大阪府生まれ。1954年、日活ニューフェイス第一期生としてトップ合格し、翌55年に『警察日記』でデビュー。タフでハードボイルドな「エースのジョー」として人気を得て、石原裕次郎、小林旭らとともに日活のスターとなる。『拳銃は俺のパスポート』など300本以上の映画に出演してきた。その役者人生を綴った自伝的小説の完結編『シシド 完結編~小説・日活撮影所百周年記念』(角川書店)は11月30日発売予定