13年ぶりに『アイアンシェフ』(フジテレビ系)として復活した“料理の鉄人”。今でも心に残る名勝負を、当の鉄人に振り返ってもらった。
勝率9割を誇り、最強とも謳われた『銀座ろくさん亭』のオーナーで、初代和の鉄人・道場六三郎さん(81才)。実は料理の制限時間は当初1時間20分と言われていたという。
「それをぼくが『1時間も1時間20分も一緒だよ』って言って、1時間になったんだ」と打ち明けてくれた。
「ぼくは31回戦ったんですが、だんだん似たような料理になってきて、ぼく自身が面白くなかったのと、映像を見ていて、昔は鯛の頭なんて出刃包丁でズバッと切れたのが、できなくなった。ああ、年をとったなぁと。ああいう映像の世界ではすごく格好いいところを見せたいですからね。それで何度も引き留められたんですが、中村孝明さんを和の鉄人の後継者にして、ようやくやめさせてもらったんです」
と言う道場さんが選んだのは、現在は『広東名菜富徳』のオーナーシェフを務める周富徳さん(69才)との“豚対決”(1994年1月9日放送)。
“食の魔術師”と称された周さんは、弟の周富輝さん(62才)の敵討ちに登場した。周さんは、ひき肉の茶碗蒸し、大根とバラ豚肉の豆鼓煮など5品。鉄人・道場は、豚肉と高菜白菜包み蒸し、豚ヒレ醍醐揚げなどを作成。勝者は挑戦者の周さん。
道場「豚肉を焦がしちゃったんだよ。高圧釜で大根と一緒に炊いたんだけど、水分の量が少なくてねえ。まあ焦がしたといってもたいしたことなくて、削って出したんだけど、やっぱり焦げた匂いが立ち込めるでしょ。それで周さんに負けてしまった。このとき、初めて負けたんです。鉄人の対決でいちばん大事なのは、絶対に失敗しちゃいけないということ。ちょっとした失敗が負けにつながるということを学んだよ」
対する周さんは、鉄人との戦いをこう振り返った。
周「道場さんとは2回戦って、1回目のタラバガニ対決では負けた。だけど2度目にようやく勝てたんだ。1回目のときはさすがに試合ということで、緊張したね。カッカカッカ、興奮もした。でも、店で普段やっていることをやればいいんだからと、2回目は悟ったんだよ」
※女性セブン2012年11月22日号