歯を失った場合、入れ歯などの人工歯が必要になるが、材質によっては熱が伝わりにくかったり、食べ物がおいしく感じられなくなることも。そんな中、インプラントの注目度が高まっている。
読者アンケートで「今後、歯がなくなった場合、どんな治療を行いたいか?」と質問したところ、約40%の人がインプラントを希望。一方、実際に歯を失った人が行った治療法でいちばん多いのは約半数の人が選択したブリッジ。インプラントはいちばん少なく、10%だけだった。
インプラントは、メリットが多い分、不安の声も聞こえる。
「“脳に近い部分の手術”、“細菌の多い口腔内と生体内部を直接つなぐ”など、意外に高いリスクがあります。検査・感染予防設備が万全かどうかなど、治療を受けるクリニックは口コミやホームページなどでよく見極めて。低価格や短期間を謳うクリニックは用心しましょう」
と語るのは歯科業界に詳しい医療ジャーナリストで、日本歯科新聞社『アポロニア21』編集長を務める水谷惟紗久さん。
事前の徹底した検査とともに、治療後のメンテナンスや定期検診がとても大切だ。
「アイエス デンタルクリニック」院長の石田智子さんはこう話す。
「インプラントの場合、従来の治療のように、“治ったら終わり”ではなく、一生のおつき合いになります。治療方針などもよく話し合い、相性のいいクリニックを選んで」
では、具体的にインプラントとは、どのようなものなのか見ていこう。
「トルナーレデンタルクリニック」院長の龍信之助さんは、インプラントの耐久性について次のように語る。
「耐久性の高いチタン製のボルトを使用し、感染予防体制が万全で、噛み合わせがよく調整されていれば、半永久的に使えます」
ただし、次のような弱点も。
「天然の歯と同様歯周病に弱いので、手入れが不充分だとグラつくことも。定期的なクリーニングや検診を欠かさなければ、一生ものになりえます」(石田さん)
また、インプラントは、事前の検査などで、治療可能かどうかをチェックすれば誰でもできるという。
「治療の前に、歯肉の状態や骨の状態(ボルトの埋め込みに耐えられるかどうか)をレントゲン撮影で確認します。また、重度の糖尿病などの疾患がある場合、行えないこともあります」(石田さん)
治療後にインプラントを除去するケースもあるという。
「治療後、脳梗塞などで寝たきりになった場合、除去手術などが必要になることも。高齢者は特に将来のリスクも考えておくべきです」(水谷さん)。
費用はどのくらいかかるのだろうか?
ほとんど自費治療となるため、高額になる場合もある。一般的にインプラント体(ボルト)、上部構造(人工の歯)、検査費用などがかかるが、クリニックにより費用設定もまちまち。例えばアイエス デンタルクリニックでは、1本のインプラント体埋め入れが35万円~、上部構造が10万円~となっている。
※女性セブン2012年11月22日号