今季はメジャー最低の成績(34試合で打率.147、2本塁打、7打点)に終わり、米国の記者やコラムニストから引退すべきだとの声が聞かれる松井秀喜(38)。注目すべきは、彼らが結果論から引退を迫っているわけではなく、「今、引退すること」に意味を見出していることだ。『NYタイムズ』紙の名物コラムニスト、ジョージ・ベッシー氏の指摘は興味深い。
「今ならまだ、ワールドシリーズMVPの栄光が残ったまま引退できる。マツイが引退するとき、ヤンキースは引退セレモニーの開催を考えざるを得ないだろう。なぜならマツイは、ドン・マッティングリーやロジャー・マリス等、殿堂入りはしていないが球団史に残る名選手と肩を並べる存在であり、ヤンキースの偉大な一員だからだ」
栄光が残る状態で身を引くことで、松井の価値がさらに高まるというのである。『FOXスポーツ』で活躍するベテラン記者のボブ・クラピスク氏も、
「今季不振だったからといってマツイの輝かしいキャリアが傷つくことはないが、引退するなら今だ」
と口を揃え、MLB公式サイトの上級コラムニスト、ハル・ボドリー氏も、潔い決断を促している。
「マツイほどの偉大な選手が現役にしがみつくような姿は見たくない。マツイは引退すべきだ」
今後松井は、キャンプ招待選手として、最後の最後までオファーを待ち続ける可能性が高い。しかし2月までにその誘いがなければ、日本復帰や、引退という決断をせざるを得ない。
巨人やヤンキースで幾多の伝説を残してきた松井。彼がどんな男の引き際を見せるか、目が離せない。
●文/古内義明(スポーツジャーナリスト)
※週刊ポスト2012年11月23日号