舞台『放浪記』をはじめ、舞台やテレビで活躍した女優の森光子さんが10日、肺炎による心不全のため都内の病院で亡くなった。92才だった。ライフワークとなった『放浪記』がスタートしたのは1961年。それから48年もの間公演は続き、89才の誕生日となる2009年5月9日には、前人未到の上演2000回を達成した。晩年まで、元気な姿を舞台で見せ続けていた森さん。その健康の秘密は何だったのだろうか。(女性セブン2009年6月11日号より)
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森光子(89才)は『放浪記』で2000回もの公演を行ったのは世界でも稀で、まさに金字塔といえる。それにしても、舞台をところ狭しと駆け回る森の姿はなんとも若々しい。女性たちからは「森さんの年齢になって自分も同じように元気でいられるだろうか」との声が聞こえてくる。
森を応援しているNPO法人「JEAO」の代表、広瀬隆一さんは、2008年にトークショーをプロデュースし、全国を一緒に周り、その元気さに驚いた一人。
「舞台を続けるために健康でいる、という目的があるので、気持ちが違う。ホテルの部屋ではスクワットをし、スタッフの誰より元気でした。ギャグやジョークも飛ばし機転もききますから……」
そんな森の健康と若さの秘訣はどこにあるのか。交流のある人に聞いてみた。2007年に舞台『雪まろげ』で再共演した山田まりや(29才)は、当時何度も食事をした仲。
「森さんはお肉が好きで、サーロインでもヒレでも100g近いステーキもペロリと食べちゃう。私なんか、森さんのやっと半分の量。お肉がパワーの源なのかもしれません」
ただ、肉好きとはいえ、基本的には野菜中心の多品目少量の食事を心がけている。お酒は飲まない。スイーツは和洋とも好きで『放浪記』の出演者が集まる朝のお茶会には欠かせないアイテム。お茶と甘いものでリラックスして、舞台に臨むのだという。
そして、森が大リーガーのトレーニングやボディーケアを担当している「メジャー・トレーナーズ」の門を叩いたのは、1992年。森が72才のときだった。代表の川島英夫さんが話す。
「ちょうど足を怪我されたときで、“長く舞台をしたい”といわれたので、“怪我をしないための体づくりをしては…”とおすすめしました。実年齢よりは20才は若い印象で、関節の動きも滑らかで、動きにも切れがありました」
体年齢に基づいて、担当の河野智和さんが森に提案した運動メニューは15~20種。筋力を上げて、バランスをよくし、動きを保つために行うトレーニングだった。
森は、平均すると月に3回、集中するときは、週に2・3回のトレーニングに通う89才のアスリートだ。河野さんは「いまでも、90才を目前にした人の体ではない」と太鼓判を押す。これまでは、バランスボールやエアロバイクを使ったトレーニングをしてきた。
「エアロバイクは、血液循環がよくなって、疲労物質が流され、回復力が高まるので、体にはとてもいいのです。でも最近は、こちらからはオーダーはしていません。加齢のこともありますが、森さん自身のペースができているので、自分の体の声を聞きながら、メニューを自由に選んでやってもらうのが自然なのです」(河野さん)
森は朝起きてスクワット75回、夜寝る前に75回、計1日150回は欠かさない。多いときには、200回も。スクワットといってもハードではなく年齢に見合ったものだ。膝の屈伸のようにも見えるが、膝が前に出すぎないようにコツを心得ているという。